スヌーピーミュージアム
2021.08.05

UTグランプリ2022、テーマは『PEANUTS』!

スヌーピーミュージアム

UTグランプリ(以下、UTGP)とは、Tシャツを一つのキャンパスとしてとらえ、自由な発想でグラフィクやメッセージなどを表現することを目的としたユニクロが主催するデザイン・コンペティションだ。2022年のテーマは「PEANUTS」。来年は、長きにわたり世界的人気を誇る同作品を生み出した原作者・チャールズ M.シュルツさんの誕生100周年でもある。50年に及ぶ創作活動の中で、たゆまず描き続けてきたシュルツさんの軌跡を辿るべく、東京・町田市にあるスヌーピーミュージアムを訪れた。

UTGP2022募集サイトはこちら

チャールズ・シュルツさんの素顔

どこかとぼけた表情がチャーミングなビーグル犬、スヌーピー。不器用だけれど、気の優しいチャーリー・ブラウン。そのほか個性豊かなキャラクターたちが郊外の町で繰り広げる様々なストーリーを描いた『PEANUTS』は、1950年からアメリカの7つの新聞紙で連載がスタート。以来、シュルツさんは病のため自ら筆を置くことを宣言した1999年まで、休むことなく漫画を描き続けた。彼が描いた連載コミックは、デビューからまたたく間に世界中で大きなムーブメントに。アニメーションとなり、多種多様なキャラクターグッズとなり、アミューズメントパークのアトラクションやイベント、そして企業の広告キャラクターとなるまで人気は高まり続けた。

愛され続ける『PEANUTS』からインスピレーションを得ながら、年齢、国籍、人種、性別、また経験を問わずあらゆる人々に、Tシャツというキャンバス上でクリエイティビティを発揮してもらうUTGP2022の公募のスタートに際し、『PEANUTS』、そしてシュルツさんにまつわるエピソードやポイントを、スヌーピーミュージアム クリエイティブディレクターを務める草刈大介さんに解説してもらった。

UTGP2022 PEANUTS

スヌーピーミュージアムに常設される「チャールズ・シュルツ・ギャラリー」では、シュルツさんの人生を写真や画像で展示。『PEANUTS』が生まれるまでの背景や、作品が広まっていった様子を知ることができる。

1.『PEANUTS』はなぜ時代を超え、世界中で愛される作品となり得たのか。

UTGP2022 PEANUTS

『PEANUTS』は1950年10月2日、アメリカの新聞7紙で連載がスタート。70年以上たった現在も75カ国、21の言語、2200紙で連載され続けるという、驚異的な数字が人気を裏付ける。また前述の通りなぜこれほどまでに世界中で愛され続けるのだろうか。

草刈さん:「様々な要因があるので一言で伝えるのは難しいですが、原作はモノクロ、そしてシンプルで、あたたみがあるラインで描かれているため、時代を超えて普遍的な魅力につながっているのではないかと思います。またキャラクターの表情や動きがたくさんあること、そして彼らはただ可愛いだけでなく、時にシニカルだったり、ちょっと意地悪だったりもする。奥行き、バリエーションがあって楽しいですし、知れば知るほど新しい発見があるため、読者は飽きることがないのではないかと思います」

2. 漫画家を目指したきっかけは?

『PEANUTS』の題材にも度々登場するスポーツをこよなく愛したシュルツ少年の幼き頃の夢の一つにはプロゴルファーもあったようだが、漫画家を目指すようになったきっかけは何だったのだろうか。

草刈さん:「シュルツさんは子供時代から絵を描くことが得意で、床屋を営むお父さんがとっていた新聞に掲載されていた漫画を読むのが大好きだったそうです。様々なスポーツに親しみ、ゴルフも得意でしたが、やはり絵を描くことが好きだったんです。高校を卒業するころには両親の後押しがあって、アートスクールの授業を通信教育でうけはじめます。彼は漫画家を目指していましたが、そんな最中、第二次世界大戦が勃発します。米軍のキャンプ地にもスケッチブックを持ち込み、仲間の似顔絵を描いてあげたり、仲間が家族などに出す手紙に絵を添えてあげたものが今でも残っています。戦後、授業を受けていたアートスクールで添削などで絵を教えていましたが、自分の描いた漫画を同僚たちに見せて意見をもらうなど、漫画家としての道へと着実に歩み出していきました。その後の活躍はご存知の通り。漫画家としての道を生涯貫いた稀な人で、幸運の持ち主だったとも思います」

3.インスピレーションの源は?

UTGP2022 PEANUTS

右上の写真は、シュルツさんとスヌーピーのアイデアの元となった愛犬スパイク。

シュルツさんは亡くなる直前の1999年の断筆宣言までの約50年間で、17,897日分の漫画を描き続けた。しかも、この偉業をアシスタントも雇わず、資料収集を含むすべての作業含めたった一人で成し遂げたのだ。これだけ膨大な数のストーリーを描くためのインスピレーション源は何だったのだろうか。アイデアが枯渇するようなことはなかったのだろうか。

草刈さん:「シュルツさんは自身が経験したことしか描かなかったそうです。子供の頃に体験したこと、例えばスーパーマーケットに行った時、ホッケーを観戦しにアイスアリーナに行った時、そういった日常の中で出会う様々な人々とその言動をよく観察していたそうです。チャーリー・ブラウンは自分自身なんだとよく言っていましたが、同時にほかの様々なキャラクターにもシュルツさんの一面が含まれているし、さらにはシュルツさんの友人の数々の性格や特徴などもそれぞれのキャラクターに反映されていました。登場するキャラクターの名前も実在する友達からとったものもありましたし、すべてのキャラクターがシュルツさん自身であり、また実在する友人たちの側面もあったからこそ、作品にリアリティが生まれたのではないでしょうか」

4. 子供たちを描き続けた訳

UTGP2022 PEANUTS

シュルツさんが『PEANUTS』で描いたチャーリー・ブラウン始め、人間のキャラクターは子供のみだった。しかし大人が登場した大変めずらしい一コマがある。それは、ルーシーが大人にまざってゴルフトーナメントに出場するというストーリーでのこと。大人(足元のみ)が登場した貴重なシーンである。では、なぜ大人が読む新聞の連載コミックに登場するキャラクターが子供だけだったのだろうか。

UTGP2022 PEANUTS

現在スヌーピーミュージアムで開催中の企画展「スポーツは人生のともだち」で展示中の原画。

草刈さん:「シュルツさんがアートスクールの講師だったとき、たまたま描いた子どもの絵に同僚が目をとめ、描き続けるようにアドバイスを受けたといいます。シュルツさんが子供の漫画を描いた理由ですが、大人が大人の話をしても面白みがない、むしろ子供が大人のような話題で会話したり、恋をしたりするのが面白いんじゃないかという思いに至ったのではないでしょうか。大人に関する漫画をずっと描きたい気持ちはあり、『PEANUTS』の連載が始まった後、大人が登場する別の作品を発表したのですが、それほど評判にならなかったそうで ・・・。」

5. シュルツさんが本当に伝えたかったこと。

UTGP2022 PEANUTS

シュルツさんはこの長きにわたる連載に、どんなメッセージを込めていたのだろうか。一貫したテーマはあったのだろうか。この問いに、草刈さんは皆が見過ごしがちな『PEANUTS』の本質的なテーマについて語ってくれた。

草刈さん:「『PEANUTS』にはどこかダメで冴えないキャラクターが多く登場します。チャーリー・ブラウンは、自身が率いるリトルリーグで勝てたことは1回しかないし、気になる女の子には声を掛けられないでいる。でもそもそも完璧な人間なんていない、みんなダメなところ、弱いところがあるはず。そんな人間のありのままの姿をシュルツさんは描き続け、人々を励まそうとしていたんだと思います。そして見過ごされがちですが、『PEANUTS』はただのギャグ漫画だったということを忘れてはならないと思います。読者にとって新聞は毎朝届くもので、読み終わればその役目は終わるものとシュルツさんは考えていました。そうしたコミックには難しいテーマは必要なくて、仕事に行くのがちょっと面倒で憂鬱に感じる朝に、パンチの効いたギャグでクスリと笑って、少しでも良い気分になってもらえればいい、そんな風に思っていたのではないでしょうか」

UTGP2022、審査員はもちろんピーナッツファミリー!

いかにシュルツさんが真摯に仕事に向き合ってきたのか、そのエピソードは尽きることがない。シュルツさんはたった一人で作業を行ってきたが、『PEANUTS』がビジネスとしても大きく成長していく上で、秘書を始め多くの人々に支えられ、そして家族や友人にも常に囲まれていた。

UTGP2022 PEANUTS

シュルツさんと妻のジーンさん。テニスをするスヌーピーたちをあしらったTシャツを着て。

©Alyce Sheehan. Courtesy of the Charles M. Schulz Museum and Research Center

UTGP2022 PEANUTS

PEANUTSスタジオのチーム

「UTGP2022」の応募作品は、シュルツさんの創作を陰ながら支えてきたピーナツファミリーが審査を担う。そして厳正な審査の結果選ばれた作品は、UTの新コレクションとして、商品化され、全世界のユニクロ店舗で販売されることになる。さらに受賞者には副賞として、PEANUTSスタジオでのインターンシップという貴重な経験の場を用意する予定だ。これまでもUTGPを受賞した参加者には現在デザイン業界で活躍中の人々も多くいるように、UTGP2022が未来のデザイナーたちの輝かしいキャリアへの第一歩になれたら嬉しい。新しい感性・アイデアによる愛すべき『PEANUTS』を楽しみにしたい。

UTGP2022募集サイトはこちら

スヌーピーミュージアム(東京都町田市鶴間3−1−1)
スヌーピーミュージアムは、アメリカ・カリフォルニア州にあるシュルツ美術館の世界で唯一の公式サテライト(分館)。現在企画展「スポーツは人生のともだち」を開催中。

PROFILE

PEANUTS|チャールズ M.シュルツ氏が初めて『ピーナッツ』の仲間たちを世の中に紹介したのは、1950年。『ピーナッツ』が7つの新聞紙上でデビューを飾った時だった。それ以来、チャーリー・ブラウン、スヌーピーをはじめとするピーナッツ・ギャングたちは、ポップカルチャーに不滅の足跡を残してきた。Apple TV +で親しまれているピーナッツの番組や特番に加えて、多種多様の商品やアミューズメントパークのアトラクション、文化イベント、ソーシャルメディア、そして伝統的な紙媒体からデジタルまで各種媒体で掲載されている連載コミックなどを通して『ピーナッツ』を発信。さらに2018年、『ピーナッツ』 はNASA とスペース・アクト・アグリーメントで複数年提携した。このスペース・アクト・アグリーメントは宇宙探査と STEMへの情熱を啓発するよう次世代の子供たちに向けてデザインされたプログラムである。


草刈大介|ブルーシープ代表/プロデューサー。「スヌーピーミュージアム」クリエイティブディレクター、「PLAY!」プロデューサー。朝日新聞社文化事業部を経て、2015年にブルーシープを設立。展覧会や書籍のプロデュース、美術館の企画・運営を手掛ける。

©2021 Peanuts Worldwide LLC

※店舗ごとに在庫状況が異なりますので、予めご了承ください。
※UTの全ての商品ラインナップが揃う店舗は、「オンラインストア」と下記の「UTフルラインナップ店舗」です。
原宿店、ユニクロ TOKYO、ユニクロ PARK 横浜ベイサイド店、銀座店、ビックロ ユニクロ 新宿東口店、渋谷道玄坂店、御徒町店、池袋サンシャイン60通り店、世田谷千歳台店、吉祥寺店、札幌エスタ店、名古屋店、京都河原町店、心斎橋店、OSAKA店、あべのキューズモール店、イオンモール沖縄ライカム店