「UT GRAND PRIX (UTグランプリ)」は、Tシャツを一つのキャンバスととらえ、誰もが自由な発想で表現できるコンペティションとして2005年にスタート。15年目となる2020年のUTGPではニューヨーク近代美術館(MoMA)の協力のもと、「DRAW YOUR WORLD」をテーマに、世界のアーティストたちがTシャツをキャンバスにそれぞれの世界を自由に描いたUTGPの原点とも言えるコレクション。初代受賞者である花井祐介さんに続き、今回はUTGP2020のグランプリ受賞者であるフィリピンのイザベル・サントスさんに、受賞について話を聞いた。
──今回、グランプリに選ばれた作品「A Fortune in Jewels Kept in Your Safe」は、イザベルさんがUTGPに応募したいくつかの作品の一つということですが、ご自身でも特に気に入っている作品だそうですね。
今回の作品は女性を題材にしていますが、このテーマは、写実的でもコミック的なスタイルにしてもとても面白いと思います。制作過程で切り取ったものを順番に並べてみたら、とても魅力的であることに気づきました。私は、日常にあふれているものを、少し変わった視点でアレンジするのが好きなんです。例えば、今回のデザインのように、髪の毛のない頭を並べてみることで、見る人へのインパクトが大きくなります。思わず見入ってしまいませんか。
──「A Fortune in Jewels Kept in Your Safe=金庫に眠る宝石の幸運」という、このタイトルだけでも魅力的で独創的ですね。このタイトルはどこから生まれたのですか?
この作品を制作中に、ガブリエル・ガルシア=マルケスの「コレラの時代の愛」を読んでいました。この中に、印象に残ったある一節がありました。それは、「あるものを現実として選択すること」についてでした。今回のデザインでは、必要のないものを取りのぞき、「見るべきもの」に焦点を合わせるためにパーツをバラバラにすることを重視しました。その結果、私なりに「見るべきもの」を伝える試みとなりました。今回の受賞は、まさに幸運をもたらす宝石になったと思います。
──今回のUTGPの募集テーマは「Draw Your World」でした。この作品で、何を表現しようと思いましたか?
私の作品はすべて、私自身の延長線上にあります。私の作品は、私の経験や興味そのものでもあり、「自分の世界を描く」ことです。私の作品の中には、つねに私の一部があります。
UTGP2020のメインビジュアル
──UTグランプリに選出された感想は?
今でも信じられません。私にとって今回の受賞は非常に大きな出来事で、私の作品が評価に値することを確信することができました。残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響により、当初予定されていたMoMAでの祝賀会に参加できなかったため、悔いは残ります。好意にしていただいたユニクロの方々、MoMAの関係者、そして審査員の方々にもお会いできず残念でしたが、審査員のローレンス・ワイナー氏との自撮りをいつか実現したいです。
──イザベルさんは、UTグランプリを受賞した初めてのフィリピン人です。フィリピンで活動するアーティストや、若いアーティストたちに向けてアドバイスはありますか。
とにかくやってみることです。私がこのようなコンテストに応募したのは、これが初めてではありません。私の場合、さまざまなコンテストに応募しましたが、受賞からは程遠い状態が長く続いていました。すぐに結果が出せないのは当然のことです。でもあきらめないでください。そして、すべての経験から何かを学んでほしいと思います。
──イザベルさんは、アートをより身近に感じてもらうためのユニクロの取り組みに関心があるとおっしゃっていました。ユニクロのコラボレーションやアイテムの中で、特に印象に残っているものはありますか。
私は、主にユニクロのMoMAとのコラボ商品を購入してします。ウォーホル、バスキア、ワイナーのシャツも持っています。デザイナーとのコラボレーションもオリジナルが手に入らないことが多いのですが、とても気に入っています。例えば、ハナ・タジマ、JWアンダーソン、マリメッコ、ルメールのコレクションです。私の一番のお気に入りは、ロジャー・フェデラーのシャツです。
──フィリピンや他の国・地域のユニクロの従業員が、あなたの作品にアクセスするには、どうすれば良いですか。
もし、私の過去の作品を見ていただけるのであれば、私のウェブサイトisabelsantos.studioに掲載しています。また、私のインスタグラム(@somethingstarwars)には、制作中の作品を随時、投稿しています。
──UTGP2020 グランプリを受賞したことはあなたのキャリアにどんな影響を与えましたか。
MoMAとのコラボレーションは、アーティストとして特別です。この受賞によって、私の作品がより多くの人々の目に触れることになり、アートシーンのみならずフィリピン全土にも届いたことを感謝しています。私は芸術一家の出身で、祖父は特にフィリピンで評価の高いアーティストです。当然のことながら、先入観を持つ人々もいますが、UTGPのグランプリを獲得したことで、私は一個人のアーティストとしての名声を獲得することができました。
──最後に、少し哲学的な質問です。イザベルさんは、なぜアートに取り組むのですか。芸術に時間とエネルギーを費やす理由を教えてください。
アートは作り手にとっても、見る人にとっても大切なものだと思います。芸術家として、私は逃げることもできます。特に、生活のためにアートを制作しているときは、いつも楽しいというわけではありません。一方で、このコロナ禍においては、スタジオでの作業が世界で起きているあらゆる混乱から私を解放してくれました。私は鑑賞者としてもさまざまな作品を見ることで、自分がどう感じるかを知ることが好きなんです。好きな作品を見ていると、時には胸が詰まることもあります。でも、アートは、それぞれの時代を象徴しています。それが私にとっての芸術作品です。
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