ジェフ・クーンズ
2021.09.30

ジェフ・クーンズ スペシャルインタビュー

ジェフ・クーンズ

この秋ユニクロは、現在世界で最も有名なアーティストの一人である、ジェフ・クーンズがデザインを手がけたUTコレクションを発売する。彼は、日用品をかつてない巨大なスケールで再現したカラフルな立体彫刻にはじまり、色鮮やかな絵画作品や印象深いインスタレーション作品まで、その数十年に渡るキャリアを通して、コモディティとスペクタクル、そして形而上学的なテーマを扱ってきた。その彼を、「ガゴシアン・ギャラリー」に15年近く勤めキャリアを築いた元ディレクターで、美術史研究家兼ライターのサラ・フーバーが取材。アートの持つ変革力とジェフさんの個人的理念、そしてカタールの首都ドーハで行われる展覧会を目前に控えた彼の、さらなるグローバル進出に向けた取り組みについて語り合う。

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サラ・フーバー(以下SH):ジェフ・クーンズ神話って、ずいぶんしっかりと形成されていますよね。私もギャラリー業界に入ったばかりの頃、「MoMA(ニューヨーク近代美術館)の元受付アシスタントで、ウォール街のブローカーだった人が、昔一緒に仕事していた大金持ちの人たちに、コモディティ文化についてのアート作品を売り付けてる」なんて伝説的な話をいくつも聞きました。どこまでが実話かわかりませんが、そういった伝説は意図的に生まれたものなのでしょうか。そもそもあなた自身は、自分の見られ方について気にしていますか?私の中ではあなたにまつわるすべてが、細部まで完璧に計画されているイメージだったのですが、実はまったく無頓着で、なにも気にしていないのかもしれない。そこが、すごく気になっています。

ジェフ・クーンズ(以下JK):この何年もの間に、自分や自分の作品にまつわる伝説のような話が出回っていたのは、僕もある程度は知っています。そのうちのいくつかは、その由縁も見当がついています。僕は以前MoMAのセールス部門で仕事をしていて、その後ブローカーになった。僕の作品は既製品をテーマにしているし、作品制作には日用品を扱っている。でも、いろんな意味で僕自身は、三角形の穴に押し込まれた円形物体のような気分でいるんです。いまいち、しっくりこない。コモディティ文化に興味のある人たちが、そのテーマについて執筆しながら、僕の作品もその文化の一部であると関連付けようとしていたんでしょう。僕自身の興味はこれまでもずっと、人の感覚や感情、そして本来アートの持つ力を、いかにカタチにして伝えるか、ということだけなんです。アートがいかに僕たちを高め、僕たちの生活をより良いものにしてくれるか、ということを伝えたいと唯一望んできた。

ジェフ・クーンズ スウェットパーカ(長袖)

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SH:先に少し触れましたが、そのスケール感から、あなたの作品は消費主義やお金の意味をテーマにしているのだと考える人も多いと思います。もしくは、商業取引への批判か、アート業界がいかに彫刻のような純粋なものさえもコモディティ化しているかということへの批判ではないか、と。でも、あなたの作品はどう見てもエリート主義ではないですよね。そもそも「バルーン・ドッグ」なんかは、世界中の本当に多くの人にアピールする作品だと思います。私たちが関与するアート業界のエリート志向と、普遍性にこだわるあなたの個人的倫理をどうやって中和させているのですか?

JK:どんな人の作品に関しても、間違った解釈というのはあり得るものでしょう。(アメリカ人哲学者の)ジョン・デューイの言葉を借りると、人生とは、単細胞生物が環境と相互作用するのと同じぐらいシンプルなものなんです。環境がその生物に及ぼす影響と、反対にその生物が環境に及ぼす影響。それこそがコミュニケーションであり、人生という経験である。それこそが、僕の試みでもあるんです。僕は、われわれ人間の内面的な営みと内面的存在、そして外の世界との対話を試みているんです。僕は作品を作るにあたって、すごく可塑化されたような物であったり、すごく三次元的な物体を扱っているけれど、アートはそういった物体の中に存在するのではない。アートとは、僕たち自身の中に見つけるべきものなんです。僕たちが生活の中で触れたり見かけたりする物の中には、刺激的だったりワクワクするものもあるけれど、それ自体はアートではない。アートには、自身の可能性というエッセンスが含まれていなくてはいけない。それがアートなんです。それは、美術館に行けば、あなたが部屋を出ても離れないものであり、コンサートなら、そのコンサートが終わってもあなたのもとに残るもの。アートとは、自身の可能性のエッセンスなんです。

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SH:お話を伺っていると、かなりユニクロと通じる部分があるように思えます。ユニクロは、地球のできるだけ多くの人に最高品質の体験を届けることを目指しているブランドなんです。ユニクロの真の目標は、製品から店舗、そして地域社会に定着するための手段においても、人々の生活を向上させることにあって、その理念を「LifeWear」と呼んでいます。今お話ししていただいた内容は、その理念ととても呼吸が合うように思えます。「バレリーナ」や「バルーン・ドッグ」など、世界共通と言っても過言でないモチーフを壮大な立体彫刻にしたあなたの作品にも、その理念が通じるように思えます。ユニクロとの仕事を引き受けると決めたとき、そういったことには気づいていましたか?

JK:ユニクロは、僕の世代はもちろん、若い世代にも通じるものを持っているのが本当に素敵ですね。文化を超える魅力があり、本当にたくさんの人がユニクロの服を楽しんでいる。そういった一体感だったり、異なる文化を包含している点は僕も大好きですし、素晴らしいと思います。結局のところ僕たちは、みんなお互いにつながりを求めている人間にすぎない。それができるのであれば、例えばユニクロと協力しあってTシャツを作ることで、知らない人とつながりを持ち、僕がその人を想う気持ちや、僕らが世界的な問題に関心を持っていること、そして僕たちが共同体であること伝えることができる。こういった機会をもらえたことは、僕は心から嬉しく思っています。

SH:今年は「カタール-アメリカ文化年」ということで、この秋には60点以上の作品を集めたあなたの回顧展『Lost in America』がドーハで開催されるそうですね。お祝い申し上げます!そして、このTシャツの収益の一部は、その開催美術館に寄付されるのだとか。素晴らしい社会貢献方法ですね。これはあなたにとって、どれほど重要だったのでしょうか?また、この展覧会のタイトルはとても印象的ですね。数々の文化変成が起きている昨今、多くの人がアメリカの真のアイデンティティを問い出している時代だと思います。このタイトルは、そういったことを指しているのでしょうか。そもそも、あなたは、自分自身をアメリカ人アーティストだと認識していますか?そういった格付けはあなたにとって重要なのでしょうか。これまで何年にもわたって世界各地で作品を展示してきたあなたにとって、どういった面でアメリカ人らしさを感じることがあるのでしょうか。

ジェフ・クーンズ UT グラフィックTシャツ(半袖・レギュラーフィット)

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JK:カタールとは何年もかけて素晴らしい関係を築いてきました。2000年からこの国を訪れるようになったのですが、ドーハはもちろん、カタール国内の発展を目の当たりにしながら、これまでにさまざまな施設を訪問しました。アートへの関心を高める目的で地域社会と協力できることに、とてもワクワクしています。ここでもまた、文化の差を越えたアートの可能性について、どうしたら僕たちみんなが「アートに決まった形などない。アートとは自ら思い描くものであり、自身が持つ可能性の本質に触れることなんだ」と実感できるのか、グローバルな対話を試みたいと思っています。
僕は、子供たちに関わる仕事をするのは大好きなんです。カタールで、ドーハのチルドレンズ・ミュージアムを支援する機会を得られたのは、本当に素晴らしいことだと感じています。新しい世代の子供たちみんなが、アートの中で自分らしさを見つけることができる。いろいろと実験しながら、さらなる未来の世代のためにも、どうしたらアートの中に意義を見出すことができるのかを探り、アートは人生を豊かにするツールになるということに気づいてくれるはずです。だから、このプロジェクトに参加できることはとても嬉しいですし、大きなやりがいを感じています。
文化年にあたるこのタイミングで、この文化交流の機会にアメリカ代表として参加できることも、僕にとっては意義深い。たいへんな名誉だと思っています。展覧会のタイトルは、僕が生まれた50年代半ばから現在に至るまで、アメリカの中で人々が感じてきたさまざまな方向性を想起させると思います。
この回顧展は、これまで何度も一緒に仕事をしてきたマッシミリアーノ・ジオーニと企
画したものです。さまざまな展覧会を一緒に手掛けてきましたが、このタイトルはマッ
シミリアーノが考えたもので、僕も素晴らしいと思っています。

SH:ユニクロは東京に拠点を置くブランドということで、多大なアート支援を通して意識的に各地の地域社会に根差しつつも、洗練されたデザインと品質重視の姿勢は日本ならではだと思います。あなた自身は、日本にはもう何度も訪れているのでしょうか?あなたにとっての日本の印象を教えてください。

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JK:日本は大好きですね。初めて日本を訪れたのは1990年頃、展覧会のためでした。その後も何度か訪れていますが、一番の魅力は日本の人々だと思います。日本人の寛大な心や、お互いを支え合う姿勢。本当にお互いを思いやる心を持っているので、とても素晴らしい。僕は日本人の美意識であったり、日本の詩情も大好きです。自分の作品に託した思想を振り返って、その中にある悟りだったり、僕の作品の精神的な基盤となっている部分について考えると、そこにはすごく東洋的な面というか、日本的な面があると思います。例えば、人生において本当に大切なエッセンスとはなにか。人生の中で本当に意義あるものとはなにか。そして、僕たちが置かれた現況を超越するためにはどうしたら良いのか、とか。
僕はこれまで何年もの間、「自分になにができるのか」と自問し続けてきたんです。アーティストとして(世界や人と)つながるためにはどうしたら良いのか、と。そうして気づいたのは、僕らはみんな誰であろうと、人生のどんなステージにあろうと、できることは一つしかないってことだった。それは、まず自分自身を受け入れること。そして、自己受容ができてこそ、思考を内向きから外向きへとシフトできるようになるんだ、と。もう一つは、自分の興味を追いかけること。だって、自分が興味のあること以上に魅力的なものってないでしょう。それ以上に楽しいことなんてないはずです。誰でも自分を信じて、自分の興味を追って没頭すると、時空間の感覚が変化して、スピリチュアルな領域にたどり着く。そして、なにか万国共通の表現方法にリンクすることができる。僕は毎日、それを実践しているんです。

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ジェフ・クーンズ

PROFILE

1955年ペンシルベニア州ヨーク生まれで、ニューヨークを拠点に活動する現代美術家、ジェフ・クーンズ。彼の作品は1980年に初の個展を開催して以来、ロックフェラー・センター、ベルサイユ宮殿、ホイットニー美術館、ビルバオ・グッゲンハイム美術館など、世界中の主要な美術館やギャラリー、文化施設で展示されており、その文化的功績が認められ数多くの賞や栄誉を受けています。また、クーンズは慈善家としても知られており、過去40年間、彼は多くの活動に参加する一方で、International Centre for Missing & Exploited Childrenの役員も務めています。

Jeff Koons, ‘Balloon Dog (Orange)’, 1994‒2000. © Jeff Koons, Photo: Tom Powel Imaging, Courtesy of Mnuchin Gallery, New York. In collaboration with Dadu, Children’s Museum of Qatar.

Jeff Koons, ‘Rabbit’, 1986. © Jeff Koons, In collaboration with Dadu, Children’s Museum of Qatar.

Jeff Koons, ‘Play-Doh’, 1994‒2014. © Jeff Koons, Photo: Tom Powel Imaging. In collaboration with Dadu, Children’s Museum of Qatar.

Jeff Koons, ‘Gazing Ball (Standing Woman)’, 2014. © Jeff Koons, Photo: Rebecca Fanuele, Courtesy Almine Rech. In collaboration with Dadu Children’s Museum of Qatar.

Jeff Koons, ‘Seated Ballerina’, 2010-2015. © Jeff Koons, Photo: © 2017 Fredrik Nilsen, Courtesy Gagosian. In collaboration with Dadu, Children’s Museum of Qatar.

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