これまで数えきれないほどの魅力的なグラフィックが、UTのアイテムを彩ってきた。20年を迎えた今年、その一部の柄を復刻するアーカイブプロジェクトが始動した。時代を超えて世界中の人々に愛されるそのモチーフたちには、どんな思いが宿っているのだろう? クリエイターや関係者の言葉を通して迫る。1回目は、2009年のUTが復刻された、日本を代表する写真家の森山大道さんに話を聞いた。
Tシャツとして再生される、憧れの地“ハワイ”の記憶。
Q.今回、Tシャツが再販されることの率直な感想は?
A. 率直に嬉しいです。Tシャツは大好きなので。シンプルに、自分の写真がまた別のものに再生されることにはいつも喜びを感じています。
Q.今回のTシャツに使用された写真は、2007年に発売された写真集『ハワイ』からの1枚です。なぜハワイを撮ろうと?
A. ハワイは子供の頃からどこかで頭の中にあった憧れの場所でした。編集者とそんな話をしていたら、「じゃあ撮りましょう」となったんです。撮り始めるために現地を訪れると、観光ガイドで見るハワイとはまた違う、現地の人の日常のリアリティに触れることができました。これはなかなか奥が深いなと思い、しばらく通うことになったんです。結果、3年に渡り5度も訪れることになりました。
写真集『ハワイ』より作品を抜粋。上の写真には、カメラを構える森山大道さんの影が写っている。
Q. 写真集『ハワイ』のすべての写真はモノクロで撮られています。それがカラフルな印象の強いこの土地の風景を、森山さんにしか撮ることのできない “異色のハワイ” へと変質させていると思いました。なぜハワイをモノクロで撮ろうと?
A. 始めからモノクロで撮るつもりでいました。いつもどおりの自分のスタンスのまま、ハワイを撮ろうと思っていたので。また、実際に現地に行ってみると、ワイキキは確かにカラフルなイメージですが、少し車で走るとジャングルのような森があったり滝があったり、ジュラシックパークに出てくるような風景もあって、必ずしもカラフルな場所ばかりではなかったです。特にヒロという街は、観光地としてのワイキキとはまったく違う雰囲気が感じられて好みでした。
森山大道さんが3年をかけて撮り下ろした、陰影に富んだ作品集『ハワイ』。2008年には東京都写真美術館でも本作が大規模に展示された。
Q.今回のTシャツに使用された写真は、ヤシの木というハワイを代表するモチーフが、森山さんらしい世界観に落とし込まれた魅力的な一枚です。どんなタイミングで撮られたのですか?
A. 覚えていません。ハワイはどこへ行ってもヤシの木ばっかりなので(笑)
Q.写真家としての夢は?
A.どこか色っぽいと思えるような写真を、1枚でも多く撮りたいと常に思っています。
Q.森山さんにとって写真とは?
A. 僕にとって写真とは記憶ですね。自分の記憶、被写体の記憶、それを見た人の記憶……そのすべてにおいての記憶です。
PROFILE
森山大道(もりやま・だいどう)|1938年大阪府池田市生まれ。60年代から、「アレ・ブレ・ボケ」と形容されるハイコントラストかつ粒子の粗い写真表現で注目を集め、以降50年以上スナップ写真を撮り続けている日本を代表する写真家。国内外で高く評価され、数多くの個展の開催や写真界のノーベル賞と謳われるハッセルブラッド国際写真賞等、多数の賞を受賞。「量の無い質は無い。とにかく撮れ。」と語るように、カメラを片手に今もなお街に繰り出している。
復刻Tシャツからひもとく、“本物”の魅力
【20th UT ARCHIVE vol.1 森山大道】
【20th UT ARCHIVE vol.2 天才バカボン】
©Daido Moriyama Photo Foundation
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