耳を澄ませば潮騒が聞こえてきそうなほどのどかな神奈川・逗子の港町。このエリアにアトリエを構えるのは、アメリカのサーフカルチャーに魅了され、地元とサーフィンをこよなく愛するアーティストの花井祐介さんだ。花井さんといえば、作品制作をとおしてサスティナブルな社会作りへのメッセージを積極的に発信していることでも知られる。今回のUTとのコラボレーションTシャツにも、そんな花井さんらしい想いが込められているようだ。
「サーフィンをしているとき、海にゴミがあるのが嫌だったんです」
環境への問題意識を抱き始めたのは、日常での気づきがきっかけだったという。
「サーファーってだいたいビーチクリーンをしていて、僕らも月1で集まってゴミ拾いをしているんです。だけど、調べてみるとそういうゴミは、海で捨てられているとは限らないんですよ。町で捨てられ、風に飛ばされて川に落ちて、海に流れ着いたものがほとんど。だから、海でゴミを拾っても根本的な解決にはならない。そういうことを知るうちに、メッセージを発信できる立場として、できる限りのことをしていく必要があるんじゃないかと思い始めたんです」
語り口はとても穏やかだが、その言葉に嘘や偽りはない。実際、今回のコラボレーションTシャツには、リサイクルしたポリエステルを20%使用したボディが採用されている。これは花井さんからの提案だった。
「それくらいしないと、僕がアーティストとして発信しているメッセージとちぐはぐになってしまうし、今UTとコラボレーションする意味がないんじゃないかと思って、新しく開発してもらいました。僕はリサイクルポリのペラペラ感が好きじゃないんですが、できあがったボディは結構地厚で満足しています。もちろん、理想を言えば100%リサイクル素材のTシャツを使いたかったです。それでもユニクロという大企業が動いてくれたことには意味があるし、これを買ってくれた人たちがリサイクルについて考える1歩目になればいいですね。Tシャツに描いた“ONE FOOT IN FRONT OF THE OTHER(1歩前に踏み出す)”って言葉には、そんな想いが込められているんです」
そんな花井さんは、「Tシャツは自己表現だと思うんですよ」と語る。
「バンドTを着るとき、『自分はそのバンドが好きなんだ』ってことを表現している。今回のようなメッセージTも同じで、着る人はこのメッセージに共感してくれているはずです。ボディに関しては、見ただけじゃリサイクル素材が使われているとかまでわからないですが、そういうものを着ることもメッセージを発信することになると思うんです」
最後に花井さんにとって「アーティストとしての進化とは何か?」と問うてみた。
「自分の活動が、今以上に社会にいい反応を起こせるといいですよね。僕の発信するメッセージに共感して、自分も何かしようと思えてもらえたら最高です。その反応がどんどん大きくなっていくことが、アーティストとしての僕の進化なのかなと思います」
PROFILE
はない・ゆうすけ|1978年、神奈川県生まれ。20代の頃にサンフランシスコでアートを学び、アーティストとして、国内外問わず幅広く作品を発表している。作品集に『Ordinary People』など。作品制作の傍ら、ロサンゼルスの公立小学校において美術を教えるボランティア活動も行っている。
輝ける未来を象徴する“星”を、人間たちが力を合わせて掴もうとする姿が描かれている。
社会のために考えるため1歩前に踏み出す。そんな想いが込められた1枚。
胸に描かれた紙飛行機は、背中に描かれた青年が飛ばしたもの。紙飛行機が目指すその先は?
まるで未来へとつながるかのような扉の向こうには、星がきらめく夜空が広がっている。
© Yusuke Hanai
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