世界中のカルチャーに関する情報を発信するメディア「HYPEBEAST」が、UTと共同でコレクションを作り上げた。その名は、「HYPEBEAST COMMUNITY CENTER」。「ACTUAL SOURCE」、ショーン・ワザースプーン、「PEACHES.」、「FaZe Clan」という4組のコラボレーターと、それぞれが独自に築き上げたコミュニティのユニフォームとなるようなTシャツを制作し、ひとつのコレクションとして打ち出すというのがコンセプトだ。今回のプロジェクトにかける意気込みを、「HYPEBEAST」のグローバル・クリエイティブVPであるケヴィン・ウォンさんに語ってもらった。聞き手に迎えたのは、UTのクリエイティブ・ディレクターを務める河村康輔さんだ。
ケヴィン コミュニティは「HYPEBEAST」にとって大切な要素の一つであり、私個人としても仕事の中で大切にしていることです。そして、我々のモットーでもある「カルチャーを前進させる」ことはコミュニティをつなげることだと考えます。それは、今回のコラボレーションのようにファッションだけではなくデザイン、カーカルチャーやゲーミングなどにまつわる世界中のさまざまなクリエイティブから語られるストーリーに光を当てることです。
河村 僕自身、今まで築き上げてきた関係性をUTというプラットフォームに接続することで、カルチャーを前進させられればという気持ちがあります。だから、融合させてひとつにまとめることが大事だという考え方には共感しかありません。それにしても、今回参加してくれたコラボレーターは、ジャンルも色もそれぞれ違って、「HYPEBEAST」ならではだなと思いました。僕が知らないコラボレーターもいたのですが、どのような視点で選んでいったんですか?
ケヴィン まず声をかけたのは、我々とも縁の深い「ACTUAL SOURCE」でした。デザインスタジオであると同時に、非常にユニークな書籍を出版しているパブリッシャーでもある彼らには、ブッククラブとして参加してもらいました。また、洋服やスニーカーからアートまで、「HYPEBEAST」にはものを集めるという文化を大事にするDNAがあります。なので、ヴィンテージ愛好家として知られるショーン・ワザースプーンとのコラボレーションを、コレクターズクラブと位置づけることにしました。他には、ソウルで若者主導のカスタムカーカルチャーの発展に尽力している「PEACHES」にはオートクラブ、esportsとポップカルチャーの橋渡し役を担っている「FaZe Clan」にはコンピュータラボとして参加してもらいましたが、いずれにしても共通しているのは、サブカルチャーを中核としたユニークなコミュニティ作りを実現させてきたという点です。
河村 なるほど。そのコンセプトを聞いた時点では、コミュニティのストーリーをTシャツのデザインに落とし込むのって難しいんじゃないかと思ったんですよ。だけど、できあがったTシャツを見ると、ヴィジュアルとしてしっかり表現されている上に、遊び心もあってパッと見た印象もかっこいい。カルチャーを前進させようとするとき、入り口がしっかりあるかどうかも大事だと僕は思っているんですが、このTシャツはその役割も果たしてくれるんじゃないかと期待しています。ただデザインに惹かれて購入した人たちが、そこから派生してそれぞれのコミュニティに興味を持ってくれるといいですね。
ケヴィン まさに、着た人がそれぞれのコミュニティをさらに掘り下げるための入り口になることも目指していたので、そうなることを願っています。また、遊び心があるデザインという話をされましたが、その意味で印象に残っているのは、「ACTUAL SOURCE」のTシャツです。古代の人物たちが本を読む姿を、木版画のようなタッチのイラストで描いているのですが、それぞれの人物の脇には“Good Point” “Thank You!” “I Agree”という台詞が添えられているんです。初めて見たときは、笑ってしまいました。たしかに、ブッククラブというと、学者的な真剣さが必要だと思われがちです。しかし、このブッククラブではそれほど難しく捉えなくてもいいんだというメッセージが感じられ、非常に優れたデザインだと思いました。
河村 ちなみに、ケヴィンさんは小さい頃にそういったクラブに入っていた経験があるんでしょうか。僕は友達とスケボーをするくらいで、学校のクラブなどには入ったことがないんですが。
ケヴィン ありますよ。子供の頃はスポーツが好きで、バスケットボールクラブに入っていました。それから、旅行クラブに入っていたこともありますし、常に自分の関心事を共有できるようなクラブには常に属しながら生きてきました。そして、そうしたクラブに入る楽しさは、大人になっても変わることがありません。このプロジェクトには、多くの人のそういった感情を呼び覚ませればという思いも込められているんです。
PROFILE
ケヴィン・ウォン|1990年、サンフランシスコ生まれ。2015年から「HYPEBEAST」に参画し、現在は、ロサンゼルスを拠点に、グローバル・クリエイティブVPを務める。
Photo:Takaki Iwata
PROFILE
かわむら・こうすけ|1979年、広島県生まれ。コラージュアーティストとして国内外で個展を開催すると同時に企業ともコラボレーションするなど、その活動は多岐にわたる。2022年、UTのクリエイティブ・ディレクターに就任。
今回、「UT HYPEBEAST COMMUNITY CENTER」のプロジェクトには、「ACTUALl SOURCE」、「PEACHES.」、ショーン・ワザースプーン、「FaZe Clan」という4組のコラボレーターが参加してくれた。それぞれどのような思いを胸に、独創的なコミュニティを築き上げてきたのか?
ACTUAL SOURCE
Q1「 Actual Source」が誕生した経緯を教えてください。
「Actual Source」を立ち上げたのは、私たち2人、デイヴィス・ナルーペとジェイーピー・ヘイニーです。ユタ州で出会った私たちは、長い間友人として交友してきました。2008年にデイヴィスはロサンゼルス、ジェーピーはソルトレイクシティの美術大学に入学しましたが、卒業後はまたふたり2人ともユタ州に戻り、どちらもテック企業に勤め始めたんです。しかし、書籍のデザインなどのデザインを手掛けるというふたりの夢を叶えるため、2014年に活動を開始し、それが「Actual Source」へと結実しました。
Q2 活動内容を教えてください。
デザイン案件、そして出版や商品開発を行う書店運営が主です。これまで過去には出版社、学校、企業、映像制作会社、スニーカーやアパレルのメーカー、カフェなど、幅広いクライアントと仕事をしてきました。
Q3現在の活動拠点はどこですか?
ユタ州のプロボです。ワサッチ山脈麓のソルトレイクシティから南4北300マイル (約64キロ) 離れた場所に位置するカレッジタウンです。スタジオの近くには、私たちの家もあります。お互い3人の子供がいるのですが、家族を持つには理想的な場所だと思いますね。
Q4 本を作るときに心がけていることは?
できる限りの努力と、自分たちの今持っているリソースを出し惜しみしないことでしょうか。私たちは常に勉強し、改善を心がけています。
Q5 本の未来についてはどう思われますか?
時代によって変化があるとはいえ、本が危機にさらされることはないでしょう。なぜなら、本好きの人が消えることはないと、私たちは考えているからです。
Q6 今回のTシャツのデザインについて教えてください。
読書する人物のイラストをプリントしたTシャツには、着想源があります。複数のゴルファーが様々なポーズでスイングしている姿をデザインした、古いゴルフウェアです。それを読書する人物に置き換えたら面白いと思い、私たちの友人でもあるアーティストのコリー・マーティンにイラストを描いてもらいました。もう一枚のTシャツにも、デザインの元になった木版画があります。そのイメージが面白く、雰囲気もブッククラブに似ていたので、参考にしました。大昔のブッククラブを、愉快に表現できていると思っています。こうした真面目すぎないデザインが、私たちは好きなのです。
PROFILE
アクチュアル ソース|さまざまなコミュニティのコラボレーターとともに、本やコンセプト、アパレル、空間デザインなどを手がけるアメリカ・ユタ州のデザインスタジオ。また、出版社や実店舗として限定販売の本や服、アートオブジェクトなどの販売もしている。
「ACTUAL SOURCE」
木版画調のグラフィックで描かれるのは、中世を彷彿とさせる3人の人物。そこにインターネット・ミーム風の味付けが加えられている。
PEACHES.
Q1 「PEACHES.」の活動内容を教えてください。
私たちはライフスタイル/ファッションブランドとしてロサンゼルスで誕生し、現在は韓国を中心的な拠点にしています。第一のミッションは、若年層の車及びストリートのカルチャーと他のカルチャーをつなげ、所有するか否かを問わず、多くの人々に車業界の多様な楽しみ方を広めること。そのために国内外のさまざまなクリエイターとコラボレーションをし、多様なサブカルチャーに関わっています。2021年には『D8NE』という店舗をソウルに設立し、車のスタイリングやラッピング、ファッション、食産業、喫煙場所の運営など、多岐にわたるビジネスを展開しています。また、2022年にはガソリンスタンドを韓国の至る所に設置する計画を発表しました。燃料を注ぐだけに留まらないユニークな体験を提供し、私たちのコアビジョンを広めていきたいです。
Q2 車とポップカルチャーの関係をどう考えていますか?
自動車業界がポップカルチャーに与えたインパクトは計り知れません。近年、車はただの移動手段に留まらず、個人のライフスタイルを表現するファッションアイテムのひとつになったことが大きいと思います。ヒップホップ音楽やミュージックビデオはもちろん、メルセデス・ベンツとヴァージル・アブローとのコラボレーションなどもその一例だと思います。
Q3 ずばりカスタムカーの魅力とは?
カスタムカーはライフスタイルの象徴です。人々は巨額をかけホイールの交換や車のラッピングをします。私たちがエキサイティングだと感じるのは、そうした人々の熱狂を世の中に広く知らしめること。考えてみれば、音や色、速度、香り、年式など、車は人間の多彩な感性に訴えかけてきます。多くの時間を車に費やし、この多彩さをより楽しめるよう努力することが、私たちのモチベーションなのです。
Q4 今後、ストリートにおけるカーカルチャーはどうなっていくと思いますか?
EV自動車の普及により、ストリートのカーカルチャーは消滅すると予想する人々がいます。しかし、私たちの考えはその逆。テクノロジーの進歩により、よりカスタマイズできる箇所が増え、UI/UXシステムや音響、その他のアップグレードがダッシュボードに反映されます。これらのカスタマイズは、車愛好家たちにさまざまな可能性を開くでしょう。だから今後は、より多くの人がストリートカーカルチャーを楽しめるようになると思います。
Q5 今回のTシャツのデザインについて教えてください。
すべてのアイテムには、私たちのオリジナルキャラクター「Batto」(直訳すると「お尻顔」)を採用しています。かつて、格好いい車のリアエンドを桃の絵文字で表現するのが流行ったのをご存じでしょうか。「Batto」も、それから「PEACHES.」というブランド名も、それに着想を得ています。「Batto」がいかにして誕生したのかはいまだにミステリーなのですが、みなさんと一緒に「Batto」のストーリーを紡いでいければと思っています。皆さんが、「Batto」のTシャツを着て、夢を見て、楽しい人生を送れるよう願っています。
PROFILE
ピーチーズ|次世代のストリートカー文化を牽引するブランド。2018年にロサンゼルスとソウルで設立し、魅力的なコンテンツで人気を博する。2021年には、ストリートカーカルチャーにまつわるさまざまな体験ができる実店舗『D8NE』をソウルに構えた。
「PEACHES.」
スリーブにチェッカーフラッグのデザインが取り入れられるなど、オートクラブのイメージを全面に押し出した一枚。
ショーン・ワザースプーン
Q1 今の仕事をするようになったきっかけは?
デザインの仕事をするようになったのは、何年も前にNikeと仕事をしたのがきっかけです。以後、数々のブランドと仕事をすることで、そのつど自分自身のことを深く学び、どんどん表現することに夢中になっていきました。今では、未来のプロジェクトが楽しみでなりません。自分のアイデアが具現化されていくのは、とてもエキサイティングなことです。
Q2 ショーンさんはコレクターとしても知られます。収集を始めたのはいつ頃ですか?
かなり若い頃です。野球カードに始まり、アニメグッズからおもちゃまで、様々な種類のものを集めていました。’90年代の子供は皆、生まれながらにコレクターですよ! 私は各アイテムに結びついた思い出を振り返るのが好きなんです。
Q3 現在は主にどんなものを収集しているのですか?
何でもコレクションにしているので、答えるのが難しいです(笑)。特にこれと限定しているわけではないですし、収集するものに共通点もありません。ただ、自分の目に留まって、気に入ったものを集めています。最近で言えば、’90年代のテレビゲームと車を集めていますね。
Q4 ショーンさんが共同設立したヴィンテージストア『ROUND TWO』について教えてください。
古着に対するネガティブなイメージを払拭したくて10年前にオープンしました。目指したのは、利益を目的とした店ではなく、私たちのコミュニティや友人がスニーカーや服を通して、ともに学んで成長できるプラットフォームを作ること。だから、海外の人が足を運んでくれるのはとても嬉しいです。言語の壁なんてどうってことはありません。なぜなら、ファッションに関しては、みんな同じ言語を話すから。その美しい環境と時間を生み出すのが、『ROUND TWO』なのです。
Q5 今回のTシャツのデザインについて教えてください。
私個人のコレクションをイラストで描いたTシャツでは、コレクションを忠実に再現することを心がけました。だから、スタジオ内にあるお気に入りの棚を撮影し、それをもとに’90年代風の雰囲気のイラストを描いてもらいました。宇宙を舞台にしたTシャツに関しては、私が昔から大好きな“未来のスペース・カウボーイ”というイメージに、命を吹き込みました。これを着る人が、宇宙という未来的な視点に立ってもらえたら嬉しいです。
PROFILE
ショーン・ワザースプーン|LAのデザイナー兼コレクターとして、これまで数々の著名なブランドと環境に配慮したコラボレーションを行っている。また2013年には、バージニア州にヴィンテージストア『ROUND TWO』を共同設立し、現在は複数の店舗を構えている。
「Sean Wotherspoon」
「Wotherspoon Collectors Club」という言葉とともに、惑星を集めるべくロケットに乗った人物のイラストを胸に配した一枚。
FaZe Clan
Q1 「FaZe Clan」が誕生した経緯を教えてください。
2010年にインターネット上の若者たちによって設立されました。ゲームと若者文化に根ざしたデジタルネイティブなライフスタイルを提案するメディアプラットフォームで、次世代のために従来のエンターテインメントを再構築しています。
Q2 拠点はどこですか?
本拠はカリフォルニア州ロサンゼルスにあります。しかし、世界中にオフィス、従業員、人材を擁するグローバル組織として運営されています。
Q3 具体的な活動内容を教えてください。
現在、革新的なコンテンツ、一流ブランドとのパートナーシップ、タレント事業、ファッションなど、複数の分野で事業を展開しています。また、私たちのさまざまなソーシャル・プラットフォームで世界中に5億人以上のフォロワーを持ち、ビデオブログ、ライフスタイル、ブランドコンテンツ、ゲームのハイライト、ゲームトーナメントのライブストリームなど、さまざまなエンターテインメントを配信しています。100人以上に及ぶ影響力のあるパーソナリティたちは、コンテンツクリエイター、esportsのプロ、世界クラスのゲーマーなどで構成され、NFLスターのKyler "FaZe K1" Murray、LeBron "FaZe Bronny" James Jr.、Lil Yachty aka "FaZe Boat", Offset aka "FaZe Offset" and Snoop Dogg aka "FaZe Snoop" など、ゲームの世界を超えた才能たちも含まれています。なお、ゲーム部門では、35の世界選手権を勝ち抜いた12組の競技専門esportsチームが活躍しています。
Q4 「FaZe Clan」のタレントたちはは毎日どのくらいの時間をゲームに費やしているのですか?
FaZe Clanのタレントたちは毎日5時間以上ゲームをプレイしています。最もプレイされたゲームは「Warzone」「Modern Warfare II」「Fortnite」「Apex Legends」「VALORANT」です。
PROFILE
フェイズ・クラン|ゲームを中核に据えた、Z世代及びミレニアル世代のためのメディアプラットフォーム。タレント事業も行っており、esportsのプロや世界クラスのゲーマーだけに留まらず、アスリートまでが所属している。
「FaZe Clan」
デスクトップパソコンでゲームにのめり込んでいる姿を、90年代風のデザインで表現。どこか懐かしさを覚えるレトロなデザインに仕上がっている。コーチジャケットも。
商品により、取り扱い店舗や展開国が限定されることや完売することがございます。
© Actual Source
© Peaches. One Universe
© Wotherspoon Designs
© Faze Clan. All rights reserved
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