今季よりUTのクリエイティブ・ディレクターを務める河村康輔の頭の中にあるのは、“Tシャツをとおしてカルチャーの最前線を知る”ということ。さまざまなカルチャーコミュニティと一緒にTシャツを作ることで、その魅力を紹介していくのだが、最初にお届けするのは、昨今盛り上がりを見せるスケートボードのカルチャーを落とし込んだ「スケーターコレクション」。日米それぞれのシーンで活躍するプロスケーター、上野伸平とアレックス・オルソンの2人のスタイルから、スケートボードの楽しさ、高揚感、その生き方に迫る。
〈EVISEN SKATEBOARDS〉のプロライダーであり、自身のスケートボードプロダクション「TIGHTBOOTH PRODUCTION」を手掛け、全身全霊でスケートビデオの映像作品を作り、世に送り出すのが上野伸平さん。日本のスケートボードシーンに真正面から向き合う抜きん出た情熱と、やんちゃそうな風貌からは想像できない真摯な姿勢で、スケートカルチャーのボトムアップにはなくてはならない稀有な存在だ。
「スケートボードを始めたのは小学校3年生の頃。中学生までは団地に住んでいたのですが、居住者がみんなで使える倉庫が棟ごとにあって、そこに置いてあったスケートボードを借りて幼馴染や友達と一緒に乗ったのが初めてでした。本格的にトリックを始めたのは15歳のときで、時代はスケートボードブーム真っ只中。街をぶらぶらしているときに、スケートショップのテレビモニターで流れていたスケートビデオに衝撃を受けて本格的に始めようと思いました。10代は地元の大阪ローカルスポットで、20代からは基本的に毎日違うストリートに滑りに行くようになりましたが、夜の梅田は深夜1時以降になると人もいなくなるので最高なんです。ピッカピカの大理石の路面で、夜でもバッチリ照明が明るいスポットで、そこで朝まで滑って夕方まで寝るみたいな生活をしていました。スケートを始めてからは毎日巧くなっていると感じながら滑っていましたね。 昨日より1センチ高く飛べるようになった、ということの繰り返しです。本当に毎日スケートボードをしていましたから」
上野さんも現在までに数多くのスケート映像作品を発表しているのだが、その代表作には『LENZ』シリーズがある。昨年末、「TIGHTBOOTH PRODUCTION」スケートビデオ三部作の集大成、『LENZⅢ』が前作から9年もの長い時間をかけてようやく完成し、全世界でリリース。東京、大阪、ロンドン、ニューヨークと上映会が行われ、喝采を得た。
「命懸けという言葉は大げさかもしれませんが、作品はそれくらいの気持ちで作っています。仲間と汗だくになり、血だらけになりながら、数秒の映像を撮るために、労力と想いを込めるんです。9年もかかっているので、9年前に自分たちに影響を受けた7歳のキッズが今作ではフルパートを持っていたり、同じように前作を見てフィルマーとして弟子入りしたアシスタントが今作で一人前にもなりました。長い年月をかけて、日本のスケートヒストリーをつないでいく新しい才能を見守り、育ててこれたのではないかと思います。
そもそもビデオカメラで撮る行為というのは、実はスケートボードを始めた頃からやっていて、単純に自分がどれくらいオーリーができているのかという確認や記録として撮っていたんです。それから家にあるパソコンで編集して、BGMもつけて、スケートビデオ制作の真似事を遊び感覚で楽しんでいました。でもそうやって遊んでいると、もっともっと本格的にやりたいなって思うようになってAppleのFinal Cut Pro 7などを使って編集するようになりました。
自分のスケートビデオ制作スタイルは自分が気に入らない部分をすべて排除していく作業で、映像とサウンドトラックは、フィフティ・フィフティでどちらかが負けないようにというのをすごく意識しています。あとは視覚グルーヴという言葉を自分は使っていて、いわゆる視覚的なノリなのですが、見ていて飽きがこなく、間延びしないようなテンポの映像を追求しています。
これからどんなことに挑戦したいのか? という問いには、「日本にはまだ存在しない『スケートプラザ』を作りたい」とはっきりと言う。それは、ヨーロッパに多く存在している都市空間にある公共のスケートパークだ。いわゆるなスケートパークではなくて、街に溶け込むように大理石や花壇のセクションがそれとわからずに工夫を凝らし造られているようなスポットで、スケーターが街中でスケートボードをしない人たちとも自然と共存していける空間である。
「僕はいつも動き回っていて、落ち着きのない子供でした。スポーツや体育も好きでしたけど、ルールがあって、チームプレイが大事だといわれるものはどうしても苦手だったんです。でも、スケートボードと出合って、スケートボードというのはルールもないし、誰かに教えてもらったり、強制されることもない。スケートボードをとおしてたくさん仲間もできたし、大事なことはすべてスケートボードから学びました。ユニフォームはなく、好きなファッションで誰にも強制されることなく滑れる、僕がやりたかったことはこれだと思いました」
Photos: ROLLSWYZE, REECE LEUNG, DEIB, MASAHIRO YOSHIMOTO
スケートボードと出合い、スケートボードとともに生きる。多くの仲間たちと支え合いながら、みんなで大きくなっていくことで、歴史もつないでいく。日本から世界にもちゃんと届くように。スケートをする上で最もこだわっているのはどんなところなのか? と聞くと、「自分であること」という答えが返ってきた。日本人に足りないものを上野伸平という男はしっかりと持っている。
PROFILE
上野伸平
うえの・しんぺい|スケートボーダー。1983年、大阪府出身。3年前に大阪から東京に拠点を移し、「TIGHTBOOTH PRODUCTION」を主宰しながら、〈EVISEN SKATEBOARDS〉のプロライダーとして活動。数多くのスケート映像作品を発表。幅広いアウトプットを持ち、スケートショップやアパレルブランド、飲食店のプロデュースワークなど多岐にわたる。
世界でも日本でも、さまざまな場所で見られるNO SKATEBOARDING(スケートボード禁止)。グラフィックは一見、NO SKATEBOARDINGに見えるが、実は、NOw(今) SKATEBOARDING(スケートしてる)で、禁止マークからスケーターが逃げ出している(どこもかしこもスケートボード禁止にしないで! という)風刺的デザイン。〈TIGHTBOOTH〉のTシャツのシルエットをベースとしたオーバーサイズの新しいオリジナルボディとして、7分袖TシャツとロンTが登場。
「The Greatest Slam Award」という、最も派手にコケたという架空の賞のトロフィーをデザインした7分袖Tシャツとスウェット。上野さん自身が転んでいるシーンをアノニマスにイラスト化。ボディに関しては、理想のシルエットを作り、それを着てスケートしながら撮影することで、どのように写っているのかをチェックし、微調整を繰り返し完成させた。
商品により、取り扱い店舗や展開国が限定されることや完売することがございます。
@Shinpei Ueno
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