カリ・デウィット、LAで愛と自由を語る

グラフィックTシャツの原点ともいえるメッセージTシャツを、アメリカとイギリスのアートシーンで活躍する3人の現代アーティストと制作。タイポグラフィーやグラフィックをTシャツにのせ、今をポジティブに生きる楽しさを分かち合い、愛を語る。まずは、アートをとおして現代社会が抱える問題に向き合うロサンゼルスのアーティスト、カリ・デウィットの、愛と自由に溢れたメッセージを聞こうか。

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Tシャツってやつは、みんなが簡単にできるコミュニケーションの方法さ。

3歳の頃にカナダからLAに移り住み、LAのアンダーグラウンドカルチャーとともに育ち、今もLAをベースに活動するアーティスト、カリ・デウィット。その代表作は2つあり、ひとつはインターネットの世界に無数に散らばる挑発的な画像に対して、ヘッドラインニュースや広告コピー、スパムメールといった大量に流れてくる言葉を落とし込んだ「プラスチック・サイン・シリーズ」。もうひとつは、1990年代のLAにおけるヒスパニック系不良集団が、故人の弔いのために作っていたというスウェットからインスピレーションを受けた「メモリアル・スウェット」だ。

「プラスチック・サイン・シリーズはこれ！といったインスピレーションがあるんだよ。以前、LAのリンカーン・ハイツにあるメキシカンレストランに行ったんだけど、そこにはブリトーの写真に“Now Available”ってサインが入っていて、もし写真と写真にのせる言葉がまったく異なるものだったら面白いんじゃないかと考えたのが最初なんだ。そういったサインはLA中で見かけるから、サインが作られている工場を見つけて、そこで制作することにした。僕はそのブリトーのサインと同じサイズ、同じレイアウトを今でも使っているんだ。ブリトーがユニクロまで旅をしたね（笑）。もうひとつのメモリアル・スウェットのアイデアもすでにLAに存在していたんだよ。昔、スワップミート（蚤の市）でスウェットのレタリングをヒートプレス機で作っているブースがあって、誰でも注文することができたんだ。不良たちもそこで作っていたんだけど、あるときそのブースがなくなってしまったんだ。プリント技術が進歩したゆえになくなったのだと思うけど、僕はこの昔と同じヒートプレス機でレタリングを入れたかったんだ。街中を探したけど結局見つからなくて、でもいろいろ調べていると、ミシガン州に同じオールドイングリッシュのフォントで、アイロンで付くアップリケみたいなものを作っている工場を見つけたんだ。学校やスポーツウェアのためのものだったけどね。そしてその工場にオーダーするようになって、それからヒートプレス機を買って、自分でも作り始めたんだ。好きなものだから、同じように作り続けていきたいと思っているよ。世間が新しいやり方に切り替えて、昔の製法を忘れてしまってもね。今はもう自分ではプレスしていないけど、同じ機械がこのスタジオに置いてあるよ」

朝は息子や妻とともに過ごし、11時30分にバイクで仕事に出かける。作業をして、家に帰って家族に夜ご飯を作る。息子を寝かしつけて、映画を観て23時までには寝る。カリ・デウィットの一日の生活はLAらしく自由で、優しくて、ヘルシーだ。

「今回のTシャツのテーマは、愛と自由。世界で起きているさまざまな問題にかかわらず、愛と自由をメッセージに込めてみんなに贈りたいね。僕のデザインは、考えること、写真を撮ること、絵を描くこと、という行為を同時にフォトショップに落とし込んで、それが一体となって生み出される。Tシャツってやつは、着ている一枚でコミュニケーションが生まれるものだと思うよ。描かれたグラフィックや言葉は人に何かを伝えるための手段であり、お手頃で、手を伸ばす必要もなく、みんなが簡単にできるコミュニケーションの方法さ。だから、……何はともあれ、良いものだね！」