ピクサー アート
2023.05.19

あの「ピクサー」のキャラクターがアーティスティックになったならば。

ピクサー アート

「ピクサー・アニメーション・スタジオ」(以下、「ピクサー」)が生み出した『トイ・ストーリー』『モンスターズ・インク』『ファインディング・ニモ』『カーズ』。老若男女問わず世界中で愛される作中のキャラクターたちが、薫風さわやかな折、アーティストの三上数馬さんとアダム・リスターさんの手により「ピクサーアート」となってUTコレクションに登場だ。2人には、制作時や作品との思い出を、そして「ピクサー」のキャラクター・アート・ディレクターである村山佳子さんには、魅力的なキャラクターたちがどのように生まれてくるかの秘密を聞いた。

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原作の面影をしっかり残したままに、アーティストの作風を身に纏ったキャラクターたちは、ユニークで愛嬌たっぷり。アメリカからの影響をど真ん中に、ポップでダークなタッチの三上さんは、手描きの線画をデジタルで彩色し、いつものウッディやバズ、サリーだけど、どこから見ても三上さんらしい作風に仕上げた。水彩絵の具とアクリル絵の具を使ったアダムさんのピクセル画は、まるでモダンミュージアムに飾ってありそうなソフィスティケートされた雰囲気だ。

手法もタッチも、作品ビジュアルも異なる2人だが、制作時には共通して、キャラクター本来の持つチャーミングさにあらためて気付かされたそう。「ピクサー」生まれのキャラクターはなぜこんなにも人々の心を掴むのだろう? そんな素朴な疑問から、「ピクサー」でキャラクターデザインを担当する村山佳子さんにお話を伺ってみることに。

三上数馬さんの制作時の話。

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今回は「ピクサー」同様に、線画から描いてみたんです。ただ、同じ手法をとっているので、工夫をしなければ単なる塗り絵になってしまう可能性もあるし、かといって自分の作風を強く出しすぎると原作から離れてしまうという葛藤を抱えながら絵を描かせてもらいました。世界中から愛される存在だからこそ、ファンの方々を失望させたくないという気持ちも強く、よいバランスを探るのが今回の挑戦でしたね。

制作期間中は、自分自身も今回のコラボレーションを進めてくださったチームの一員になった気持ちでキャラクターたちに寄り添おうと思い、作品をすべて観返して、何度もスローモーションでじっくり動きを観察しました。『トイ・ストーリー』のTシャツのバックプリントにもなっているのですが、アンディが成長してウッディたちを置いて大学の寮に引っ越すシーンなどは、あらためて観ると個々のキャラクターたちの表情が本当にとてもいいんです。下絵を描いている途中には6歳の息子にラフを見せたりしたのですが、珍しくすごいいい反応があったりして、やっぱり小さな子供にもこのキャラクターたちの魅力が本能的にわかるんだろうなと感心しました。

完成までに何度も調整して、試行錯誤の連続でしたが、それも含めてよい思い出です。アートというものは完成したら作り手のものではなく、見る人のものだと思いますし、評価も大切ですが、何より制作のプロセス自体が貴重な財産になりました。今回はキッズ展開もありますし、忖度しない子供たちにも絵の楽しさが届いてくれるといいなって思います。

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フロントには『トイ・ストーリー』の作中に登場する愉快な仲間たちが勢揃い。バックには、作中で17歳になったおもちゃの持ち主、アンディ・デイビスがウッディたちを置いて大学の寮へ引っ越しをする切ないシーンに登場する車が。

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フロントの胸元には『モンスターズ・インク』に登場する女の子、ブーの部屋に通じるドアが描かれ、バックにはサリーとマイクの仲良し2ショットを大きくプリント。

PROFILE

みかみ・かずま|アーティスト。1982年、東京都生まれ。小学生の頃に見ていた’80〜’90年代のアメリカのドラマや映画に影響を受け、専門学校卒業後にアメリカを旅する。帰国後、本格的にイラストレーターとして活動を開始。広告を始め、雑誌や書籍、MVなどで活躍。2020年以降、別名義「Cyber Actress」として陶芸や立体物を制作するなど、活動領域を拡大中。

アダム・リスターさんの制作時の話。

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実は、『トイ・ストーリー』は娘が4歳のときに初めて映画館で一緒に観た作品でしたので、個人的に思い入れが強く、独自の手法でアートとして再構築できる機会をいただけて素直に嬉しかったですね。映画の中の世界にびっくりしたりワクワクしたり、くるくると変わる娘の表情は今でも鮮明に覚えています。あの頃の娘のように、今回のUTに描かれた僕の作品を見る人が楽しい気持ちになってくれたらいいなと思いながら制作に取り組みました。

既存のキャラクターを再構築する上で大事にしたのは、それぞれのキャラクターの本質をはっきり理解しようということ。ディテールやニュアンスを自分なりに解釈して、そこで感じたキャラクターの個性に敬意を示しながら、ピクセル画という自分のスタイルに落とし込みました。もちろん、作品を観返して活発に動いているキャラクターたちにも会いに行きましたよ。どの作品もずいぶん前に観てそれっきりだったので、なんだか昔からの友達と交流を深めているような気持ちになりました。アイコニックなキャラクターたちと自分自身の世界やアートワークが結びつく今回のような素敵なコラボレーションは、いつでも大歓迎です!

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『トイストーリー』の英雄、ウッディとバズ・ライトイヤーが、青空柄の壁紙の前で決めポーズ。

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真っ黒なTシャツの中で手を振る『モンスターズ・インク』のサリー。その下には、「We scare because we care」(真心こめて脅かします)という、サリーが作中で勤めている会社のスローガンが。

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PROFILE

アダム・リスター|アーティスト。1978年生まれ。ニューヨーク州ビーコンを拠点に活動するビジュアルアーティスト。水彩絵の具の透明性とアクリル絵の具の平面性を組み合わせることによって、象徴的な絵画やポップカルチャーを幾何学的に解釈したピクセルスタイルの作品を多数発表。「様々なテクニックを学び、立体作品を作ったり、フォトリアリスティックな絵画や抽象画を描いたりといろいろトライしたのちに今のスタイルにたどり着きました」。2023年の夏には東京で展覧会を開催予定。

キャラクター・アート・ディレクター、村山佳子さんに聞いた 「ピクサー」でのキャラクター作りの話。

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はじめに、性格、想定する人物のバックグラウンド、作中での役割、ビジュアルイメージなど、監督のアイデアが共有され、それに沿って2か月ほどかけてキャラクターを考案します。ここが私のメインの仕事ですね。キャラクター・アート・ディレクターは、文化や歴史について勉強をした上で、監督の伝えたい人物像やストーリーに合ったキャラクターをいかに表現できるかがポイントです。あと、個人的に大事にしたいのはリアリティ。「うちのお母さんってこんな!」「これ私の友達そっくり!」みたいな、親近感の湧くキャラクターだと見る人も楽しいと思いますので。

こうして2Dのキャラクターデザインが整ったら、次はスカルプチャーチームが粘土やコンピューターを使って3Dに起こし、そのあと、コントラストで立体感をつけるシェーディングアートチームが色や質感をデザイン。さらに、キャラクターの細かい動きを決めるCharチーム、毛髪を担当するGroomチーム、洋服を担当するTailoringチームなどへと引き継がれていきます。多くの人が関わり、作業も細かいのが想像できますよね。これらのチームが元のデザインを忠実に再現できるようにサポートするのも私の仕事なのですが、どの作品のどの工程に関わる人でもひとり残らず謙虚で、自分ができるベストなパフォーマンスをしようという情熱とハングリー精神に溢れているんです。きっと、今回UTに登場するキャラクターたちも、当時そうやって多くの人の愛情を受け、ストーリーとマッチした唯一無二のアイコニックなキャラクターとして誕生したからこそ、今でも世界中から愛されているんだろうと思いますね。

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PROFILE

むらやま・けいこ|キャラクター・アート・ディレクター。さまざまな企業でキャラクターデザインに携わり、2022年に「ピクサー」に入社。第95回アカデミー賞にもノミネートされた長編映画『私ときどきレッサーパンダ』にキャラクターデザインとして参加し、現在は、2024年6月全米公開予定の長編映画『インサイド・ヘッド2』でキャラクター・アート・ディレクターを務める。「『ピクサー』には美味しくて手頃な社食や、マッサージやジムも常設されていて、セラピードッグと触れ合うこともできます。ストレスなく働けるように気配りされた環境で、入社当初は驚きの連続でした」

PROFILE

ピクサー・アニメーション・スタジオ|1986年設立。アメリカ・カリフォルニア州にあるアニメーション制作会社。『トイ・ストーリー』ではおもちゃの世界、『モンスターズ・インク』ではモンスターの世界など、イマジネーション溢れる世界が舞台となった作品を世に送り出す。2023年8月には、火、水、土、風のエレメントたちが暮らす幻想の世界をコンセプトにした最新作『マイ・エレメント』が公開予定。

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©Disney/Pixar

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