『クリアカード編』連載クライマックス最高潮中の大人気少女漫画『カードキャプターさくら』を始め、『魔法騎士レイアース』、『xxxHOLiC』、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』の4作品がいよいよUTのラインナップに登場! 世界中に熱狂的なファンを持ち、幅広い世代に愛される物語を生み出し続ける4人の女性創作集団CLAMP作品の魅力に迫るべく、4タイトルの出版元である講談社の担当編集者3名に話を聞いた。身近にいるからこそわかるCLAMP作品のすごさ、人気のワケを、ちらり垣間見える先生たちの素顔とともにお届け。
PROFILE
CLAMP|大川七瀬先生、いがらし寒月先生、猫井先生、もこな先生の女性4人で活動する創作集団。1989年のデビュー以降、代表作『カードキャプターさくら』を筆頭に、『魔法騎士レイアース』、『xxxHOLiC』、『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』など数々のヒット作を生み出し、アニメ化、映画化された作品も多数。海外のファンも多く、20カ国以上の国で翻訳出版されている。全世界でのコミックス総売上数は1億部。
今回UTとなった4作品がこちら。
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『カードキャプターさくら』|主人公・木之本桜が、「カードキャプター」としてこの世に災いをもたらすカードを集める物語。1996年6月号から2000年8月号まで『なかよし』で連載され、連載20周年となる2016年7月号から新章「クリアカード編」がスタートし、2023年には最終回が予告されている。
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『魔法騎士レイアース』|3人の少女たちが「セフィーロ」と呼ばれる異世界に召喚され、その世界を救うために伝説の「魔法騎士(マジックナイト)」となって戦うSFファンタジー。1993年11月号から1996年4月号まで『なかよし』で連載し、今年で連載開始から30周年を迎える。
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『xxxHOLiC』|対価さえ払えばどんな願いも叶える店の主人・壱原侑子と、男子高校生の四月一日(わたぬき)君尋が、現実世界で起こる不思議な出来事に遭遇していくダークファンタジー作品。『ヤングマガジン』にて2003年から2010年まで連載され、連載開始から20周年を迎える。
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『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』|主人公・サクラの奪われた記憶を取り戻すため、幼なじみの小狼が異世界を渡り歩いて「記憶の羽根」を探し求める冒険ファンタジー。『週刊少年マガジン』にて、2003年から2009年まで『xxxHOLiC』と並行連載され、今年で連載開始20周年。
担当編集者3人のCLAMP先生担当歴とは。
桂田 僕は2001年に入社し、現在まで22年間変わらず『ヤングマガジン』(以下、ヤンマガ)所属です。10年以上は『xxxHOLiC』(以下、ホリック)の担当をしています。
斉藤 2008年の入社以降、『BE・LOVE』、『ARIA』(※現在休刊中)を経て、今は『なかよし』編集部に所属し、『カードキャプターさくら』(以下、さくら)と『魔法騎士レイアース』(以下、レイアース)の担当をしています。
内田 僕は2006年入社直後『ヤンマガ』配属で、桂田さんが僕の指導社員でした。そのあと『週刊少年マガジン』(以下、週マガ)、今は『月刊少年マガジン』(以下、月マガ)にいます。『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』(以下、ツバサ)は『週マガ』の連載で、僕が『週マガ』時代に担当になったのですが、『月マガ』異動後もそのまま受け持っています。というのも、CLAMP先生は講談社内の編集部を横断して作品を描いていらっしゃるので、編集者は基本交替せずにひとつのチームとなって活動しているんです。少しややこしいですが、CLAMP先生の連載をしていない編集部にいるのにもう10年ほどCLAMP作品を担当しています(笑)。
桂田 連載が終了している作品についても周年に合わせてポップアップショップを企画するなど、CLAMP作品の魅力を発信する役割を担っているチームだと思ってもらえればわかりやすいですね。
担当編集者としての作品との関わり方とは?
内田 どの作品も長く連載されてきたので、もちろん連載初期の頃は別の編集者が担当していて、僕らは途中から引き継いでいる形となります。
桂田 しかも、CLAMP先生は担当者以外ほとんど会うことのないような伝説の作家でしたので、お会いするまでどのような方か想像できなかったですね。
斉藤 僕は小さい頃から『さくら』を読んでいたので、担当になったときはすごく嬉しいのと同時に、自分に務まるのかすごく緊張もしました。でも、CLAMP先生の作品は他の先生方と比べても特殊で、作品の内容に関する打ち合わせなどは一切なく、作品に関してはすべてお任せして、僕らがやるべきことはネームや原稿をお預かりして入稿、校了するというシンプルな流れとなっています。
内田 編集者から何か言わなくても、先生たち自ら漫画のネタになる情報を敏感に精力的に集めていて、それを完璧に描いてきてくださいますからね。だから、僕らも作品について必要以上に聞かないですし。
桂田 「先の展開はこうしようかな」と教えてくださるときも、打ち合わせというよりちょっとしたお喋りみたいな感じです。最近の『さくら』の連載を見ていても、一字一句、句読点の位置まで緻密に考え込まれているのがわかるくらい。
斉藤 編集者から提案することとしては、例えば『カードキャプターさくら』での『なかよし』本誌の付録の内容だったりするんですけど、 先生のほうから、「こんなふうに描き下ろすのはどう?」と積極的に考えてくださったり、作品以外のことも完璧に仕上げてきてくださるんです。毎回圧倒的にかわいくて、いつも感激しています。
CLAMP担当者が集まるCLAMP ROOMで保管されている単行本。グッズなどを販売する際に、その候補となる絵が載っているページに目印をつけるそうで、付箋がみっちり貼られているものも。
単行本に掲載されたものや漫画誌の表紙として描き下ろしされたカラー原画がまとめられた豪華な原画集など。内田さんいわく、「CLAMP先生は基本、原画展などにそのまま使えるように額縁に入ったサイズを想定して原画を作成し、デジタルが主流の今でもアナログで描かれています」とのこと。
少女漫画から少年、青年漫画まで描くのがCLAMP。
桂田 対象年齢や作品のテーマに合わせて、それぞれ絵のタッチを完全に変えるテクニックも尋常じゃなくすごいのですが、そもそも少女、少年、青年とジャンルレスに作品を描くこと自体がかなり難しいことなんです。自分の成長とともに精神年齢は上がるので、例えば少年漫画家から青年漫画家に転身することは珍しくないですが、CLAMP先生は性別の垣根も超えるどころか、青年漫画を描いたあとに少女漫画へ逆戻りもできてしまうので、こんな作家さんって他にいるかなって思ったりしますね。
内田 目的意識が高く、ロジカルに話が進んでいく少年漫画と比べて、少女漫画は主人公たちの“気持ち”で物語が構成されていくことが多いですよね。ストーリーの組み立て方がまるで違いますから。
斉藤 確かにそうですね。『なかよし』は主に小学生・中学生向けの漫画誌なので、小・中学生が今求めている感情や抱えている悩みなどを考えながらストーリーを作っていくのですが、CLAMP先生は、時代によって変わっていく小・中学生にとってのロマンを敏感に察知されていてさすがだなと思います。
内田 その目に見えない感情面を考えることが、理屈では説明できないからこそ難しく感じるんですよね……。
斉藤 少女漫画というのは、自分の半径5m以内で起こる出来事の感情を描くものだと言われています。ある人にとっての大事がドラマになっていて、言葉では表しきれない感情に寄り添ってくれる繊細なジャンルです。スポーツやアクションがテーマになる少年漫画と比べると確かにすごく曖昧なものですが、誰しもが少女漫画のようにセンチメンタルな気分のときもあれば、少年漫画のように冒険心や挑戦心が奮い立つ瞬間もあるはずなので、どちらにも人間の人生が描かれているものだなと思っています。
内田 そう聞くと、巨大ロボットが出てくる『魔法騎士レイアース』も、カードを集める『さくら』も、少女漫画なのに少年漫画らしい一面もありますよね。どちらもミックスしたバランスのよさが、読者もそうとは気付かないうちに心を掴んでいるのかもしれないですね。
『なかよし』1996年2月号ふろく
CLAMPという漫画家のすごさとは?
斉藤 『さくら』でいうと、普遍的で、時代を超えたいろんなかわいさが描かれていて、だからこそ、いつの時代に見ても新しい要素が詰まっているんですよね。
内田 CLAMP先生はご本人たちも漫画やアニメがお好きだからか、ファンに響くニッチな感覚から、メジャーに受け入れられる王道の感覚まで、どちらの要素もうまく取り込まれていますよね。あと、どの作品も伏線がところどころに張られていて、1話目の段階できっと最後の展開まで決められているのではないかと思うくらい。そこまで作り込んで制作をスタートすることはなかなかできることではないですよ。
桂田 その1話目で、誰のどんな物語なのかを笑いなども入れながら最小限のページできっちり描き切るのがCLAMP先生のすごさですよね。1話目で漫画の今後が決まると言っても過言ではないんですけど、本当にお手本のような完璧さですよ。
内田 1話目でグッと引き寄せられて、そのあとどんどん増えていくキャラクターに目が離せなくなる。しかも、ただ多いだけではなく、一人ひとりが主役級の存在感があって、ただの群像劇になっていないからこそ、『ツバサ』のようにこれまで登場したキャラクターが出てくるパラレルワールドも作れるわけですよね。
斉藤 『ツバサ』の世界観は、高校生の頃初めて読んで釘付けになりました。僕らのいる世界とはまた違う世界が存在していて、しかもそこでは僕らと同じ感覚で生きている人がいて、どこかで繋がっているということを描いた漫画というのが本当に新鮮で。この世の中が広くて壮大だと気付かせてくれましたし、どこか外国の人たちの営みを見ている感覚にもなりました。
『週刊少年マガジン』2006年1号扉
桂田 そう聞くと、海外で人気があるのも納得できますね。日本の学園ものなどは、制服や部活という日本ならではのカルチャーが色濃く反映されているものが多いから、外国人からすると設定に入り込めないことが多いみたいですしね。でも、『ツバサ』はどの世界にも属さないファンタジーだからこそ、国籍問わず共感できる要素や感覚が満載なのかも。
斉藤 こうやって話していくと、「多くの人が時代を超えて共感できるテーマ」、「キャラクターの強さ」、「ストーリーの面白さ」などの漫画にとって重要な要素のレーダーチャートがあるとしたら、CLAMP作品はすべてにおいてレベルが高い上に、バランスが素晴らしいですよね。それが、洗練されていて、かつ美しい作品となっている秘密なのかなと思います。でもそれは芸術のように敷居の高いものではなく、あくまでそばにあるエンターテインメントとして寄り添ってくれるのがCLAMP作品の魅力なのだろうなと思います。
CLAMP先生との思い出と、今の関係性とは?
斉藤 僕は最初に先生方にお会いしたとき、ガチガチに緊張していたんですけど、お二人はどんな初対面だったんですか?
桂田 僕はCLAMP先生が東京を拠点にしている時代にお会いしましたね。先生方は今は京都にアトリエがあるのですが、その前は東京のアトリエで、通路も入り組んでいて魔女の住むお城みたいな場所だったのを覚えています。
内田 僕は引き継ぎのご挨拶も兼ねて、一緒にお食事をしましたね。今もそうなんですけど、会食のときは作品の話はあまりされずに、好きな漫画とかアニメ作品、今ハマっている人やもののお話をされていて、けっこう長い時間、ご一緒します。お昼の12時集合、夜の8時解散みたいな(笑)。
桂田 最近は減りましたが、昔はカラオケによく行っていましたね。早めのディナーをご一緒して、そこからカラオケ大会。僕がちょっと音程を外すものなら、「外れてるよ!」って言われたり(笑)。
斉藤 とても楽しくてアグレッシブな先生方ですよね。お話も大好きで好奇心に溢れていて、今はこうなの? どうなの? といろんな質問をしてくださいますし。
桂田 そういえば、今回のUTのTシャツは先生たちも気に入ってくださっていましたよ!
話してくれた3人
PROFILE
『カードキャプターさくら』『魔法騎士レイアース』担当
なかよし編集部 副編集長 斉藤奨さん|1985年生まれ、愛知県出身。なかよし編集部の中で希少な男性編集者。子供の頃から恋愛漫画好きで、少女漫画志望で『講談社』に入社。
PROFILE
『xxxHOLiC』担当
ヤングマガジン編集部 編集次長 桂田剛司さん|1977年生まれ、滋賀県出身。ヤンマガ一筋22年。『xxxHOLiC』の途中からCLAMP先生の担当を務める。
PROFILE
『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』担当
月刊少年マガジン編集部 副編集長 内田朋宏さん|1982年生まれ、埼玉県出身。初めて読んだCLAMP作品は、小学生の頃に連載していた『魔法戦士レイアース』。妹の『なかよし』で熟読。
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