『チェンソーマン』は、悪魔と契約して“チェンソーマン”に変身する力を手に入れた少年デンジの活躍を描くバトル漫画だ。作者は1992年生まれの俊英、藤本タツキさん。斬新なキャラクター設定やスリリングな展開から目を離せない同作は、アニメ化もされ今や世界中にファンを持つ。そんなアニメ版『チェンソーマン』と、UTのクリエイティブディレクターにしてコラージュアーティストでもある河村康輔さんのコラボTシャツが登場。切ることで悪魔退治するチェンソーマンを、さらに河村さんが切り刻んだアートワークは、相性抜群と言うしかない。そんな『チェンソーマン』の魅力に迫るべく、漫画『チェンソーマン』の担当編集者である林士平さんに話を聞いた。
半袖Tシャツは林さんが着ているものと合わせて5枚登場。マンガ『チェンソーマン』の最新刊は15巻。ポチタのぬいぐるみは林さんの私物です。
まず、藤本さんとの出会いから教えてください。
約13年前ですかね。当時17歳だった藤本さんが「ジャンプSQ.」に作品を投稿してくれて、僕が担当編集になったのがきっかけです。ただ、藤本さんは地方に住んでいたので、その後は電話だけの付き合いが続き、直接会うことができた頃には2年くらい経っていたでしょうか。電話でかなり話していたので、初めてという印象はありませんでしたが。
当時の藤本さんはどんな印象でしたか?
真面目で意欲的な若者でしたね。すごいスピードでネームを切って送ってくるので。あと、切り替えも早いんですよ。「ここが気になる」って意見を言うと、全然別のアイデアを出してくる感じでしたから。
その後、『チェンソーマン』のアイデアはどんなタイミングで生まれたのでしょうか?
藤本さんは初期の頃からバトルものも描かれていたので、どこかにずっとあったアイデアだったんじゃないですかね。僕が直接聞いたのは、初連載の『ファイアパンチ』が終わって、「次はどんな連載をやりましょうか?」と話していたときだったと思います。「バトルものをやりたい」という話がまずあって、打ち合わせを重ねる中で、デンジがチェンソーマンになったデザインが送られてきて。そこから本格的に始まった感じですね。
それを見たときから傑作になる予感みたいなものはあったんですか?
いや、僕は最初反対したんですよ。「このキャラクターデザインは悪者ですよね」って(笑)。『ファイアパンチ』の主人公は、触れるものを燃やし殺してしまうというキャラクターで、非常にドラマが作りにくかったんですね。触れることはもちろん、近づくことすら危ないので。藤本さん自身もそれが大変だったとおっしゃっていたので、「(チェンソーマンという)全身武器のキャラクターでは、また難しくなるじゃないですか?」と話した記憶があります。本人は「人間状態のときもあるので大丈夫です」と言っていましたけど。確かに、3話までのネームを読んだら面白そうだったので、「これはいけるだろう」というか「いけたらいいな」と思いながら、連載開始を迎えた感じですね。
その時点では、どれくらい先までストーリーが決まっていたんですか?
全然決まっていません。「少年ジャンプ」編集部では基本的に3話まで見て、連載するか否かを決めるんですが、どれだけ続くかわからない中で、そんなに先のことまで考えても仕方がないので。『チェンソーマン』も最初は単行本2、3巻くらいまでしか打ち合わせしていなかった記憶があります。
じゃあ、3巻以降は描きながらストーリーも考えていったと?
そうですね、打ち合わせを重ねながら決めていきました。だいたいの連載はそうですね。『チェンソーマン』も6、7巻くらいのあたりで、ようやく終わりを見据え始めたような記憶があります。週刊連載だったので、毎回かなりギリギリの状態で執筆いただいてはおりましたが。打ち合わせをした後、5日前後で原稿を仕上げていただかなければならないので。
それはすさまじいスケジュールですね。そういう中で、特に驚いた展開などありましたか?
何だったかなぁ……。でも、受け取るたびに、ワクワクしていましたよ。純粋に面白いと思うことも、「何だこれ!」と驚くこともいっぱいありましたから。
では、林さんから見て、藤本さんの漫画家の個性ってどんなところだと思いますか?
“セリフ力”がすごいなってよく思います。生っぽいセリフ、「このキャラクターってそういうこと言いそうだよね」ってセリフを、すごく自然に描かれる方というか。そういうところに彼の魅力が詰まっている気がします。ときどき読者をギョッとさせるセリフもあるんですが(笑)。
その“セリフ力”は藤本さんがもともと持っていた資質だったのでしょうか。それともある時期に身につけたものなのでしょうか。
印象としては、『ファイアパンチ』の少し前、『予言のナユタ』という読み切りを描いていた頃に、何かを掴まれたような気がします。本人にも言いましたが、その頃から急にボツの回数が減ったんですよ。
そうだったんですね。『チェンソーマン』はキャラクター造形も魅力のひとつだと思いますが、林さんの一番のお気に入りは誰ですか?
僕は結構、レゼが好きかもしれません。自分の生首を爆弾にして吹っ飛ばすあたりとか、「少年漫画だぞ!」と思いながらも楽しみましたから。藤本さんは刺激的な表現と綺麗な表現のどちらもできる人ですが、レゼに関しては“きれいで怖い”みたいな感じなんですよね。花火をバックに舌を噛みちぎるあたりも、すごく好きでした。あの辺は、藤本さん自身も楽しんで描いているのが伝わってきますよね。
逆に近くで見ていて「藤本さん、苦しんでいるな」と感じたことはありましたか?
やっぱりエンディングでしょうね。どうやって終わればいいのか、悩まれていましたから。でも、時間との戦いなど色々ある中、作家の思っていた形で、走り切ったんじゃないかと思っています。最終回が発表された夜に一緒に飲みましたが、無事に乗り切れたことの満足感しかありませんでした。
かくして2021年に第一部の連載が終了した『チェンソーマン』ですが、改めて最大の魅力はズバリ何だと思いますか?
ネームを受け取っていて、漫画ならではの表現や演出を楽しんでいるなとよく感じました。例えば、コマの枠外から人ならざるものの手が出てきたり、窓枠自体がコマになっていたり。映像と漫画の間というか、読んでて映像も思い浮かぶんだけど、漫画ならではの表現をしてる。そういうところが魅力だと思いますね。
『チェンソーマン』は第一部の連載終了の翌年にアニメ化もされました。お二人はどの程度関わっていたんですか?
構成、脚本、美術設定、絵コンテの確認、声優さんとオープニング・エンディング曲の決定、それから宣伝周りですかね。とはいえ、藤本さんもとやかくいうタイプではないので、アフレコ現場にも2回くらい来てくれましたが、そこまで自分の意見を主張したりはしませんでしたね。「作りたいように作っていただければ」というスタンスというか。
林さんはアニメ版をどのようにご覧になりましたか?
やっぱりアクションシーンが面白かったですね。コウモリの悪魔を倒すシーンなんかは、「どうした!?」ってくらいカメラがぐりぐり動いていて、映像ならではのインパクトがありました。あと、全体を通して、リアルな表現を目指したアニメだなと思いました。
第3話 チェンソーマン「ニャーコの行方」
藤本さん自身のアニメ版の感想は何か聞いていますか?
自分の作品をより広い層に届けてくれたことに対して、感謝していますよね。いつも「ありがたいねぇ」と言っていますから(笑)。
そして今回、アニメ版『チェンソーマン』と、コラージュアーティストである河村康輔さんとのコラボTシャツが、UTに登場しました。最後にその感想を聞かせてください。
やっぱりUTになるのって嬉しいんですよね。世界中の人に、『チェンソーマン』を知ってもらうきっかけになるので。今の漫画って7か国で同時配信されたりするので、12時間もすると日本語はもちろん、いろんな言語の感想が届くんですよ。特に『チェンソーマン』はアニメ版もあるので、世界中に届いているなって感触がすごくある。それはすごくワクワクすることなんですけど、今回のUTはそのさらなる後押しになるなと。しかも河村さんによるすごくクオリティの高いデザインで届けられるっていうのは、本当に嬉しいです。次は、アニメ版だけではなく漫画のほうも、ぜひUTにして欲しいですね!
PROFILE
チェンソーマン|主人公は、ひょんなことから「チェンソーの悪魔」と契約し、チェンソーマンになる能力を手に入れたデンジ。「公安対魔特異4課」に引き抜かれた彼は、仲間と協力しながら立ちはだかる悪魔を退治していく。第一部は完結し、現在は「少年ジャンプ+」で第二部が連載中。
PROFILE
林士平|りん・しへい|1982年生まれ。2006年、集英社に入社。「月刊少年ジャンプ」、「ジャンプSQ.」の編集部を経て、現在は「少年ジャンプ+」編集。『SPY×FAMILY』『チェンソーマン』『ダンダダン』『HEART GEAR』『幼稚園WARS』『BEAT&MOTION』など、数々の人気作品を担当。
アニメのエピソード3のエンディングに登場するチェンソーマンを、河村さんがシュレッダーでコラージュ。「公安対魔特異4課」のマキマのセリフ、「全ての悪魔は名前を持って産まれてくる その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増すという」も英語でプリント。
マキマが謎の力を見せたシーンが、河村さんのコラージュでさらにミステリアスに。「マキマさんは内閣官房長官直属のデビルハンターだ 一端のデビルハンターじゃ契約している悪魔を知る事は許されない」という意味深なセリフも、デザインのスパイスになっている。
デンジと「公安対魔特異4課」の仲間であるパワー、早川アキ、マキマのアニメ原画をあしらった1枚。その下にプリントされている「悪魔が恐れるデビルハンターはなあ…頭のネジがぶっ飛んでるヤツだ」というセリフは、隊長である岸辺が劇中で放ったもの。
デンジと契約している“チェンソーの悪魔”ことポチタのアニメ原画をバックにプリント。それを囲むように、ポチタがデンジと契約したときのセリフ「私の心臓をやるかわりに……デンジの夢を私に見せてくれ」がタイポグラフィで描かれている。
“血の魔人”ことパワーがメインの1枚。彼女のセリフ「ワシが仲良くできるのは猫だけじゃ人間は嫌いじゃ!人間がワシに何かしたからではない悪魔の本能みたいなモンで嫌いなんじゃそして悪魔も嫌いじゃ悪魔はワシの飼ってたニャーコを連れ去ったからの!」とともに。
インパクト大のバックプリントは、河村さんがアニメ原画2枚をコラージュしたアートワーク。「全ての悪魔は名前を持って産まれてくる その名前が恐れられているものほど悪魔自身の力も増すという」というマキマのセリフもプリントされている。
こちらでコラージュされているのは、アニメ原画と実際に放映されたシーンの場面写真。バックには「み~んな俺んヤル事見下しやがってよお…… みんな偉い夢持ってていいなア!! じゃあ夢バトルしようぜ!」というデンジの名言をプリント。
アニメのエピソード3「ニャーコの行方」の原画を組み合わせたデザイン。愛猫ニャーコをコウモリの悪魔に食べられた直後、パワーが放った「ポチタをもう撫でれんと言っとったな……ウヌの気持ちわかったぞ 酷い気分じゃな」というセリフが目を引く。
バックプリントのポチタが印象的なこちらのデザインは、ロンTバージョンもある。フロントには、『チェンソーマン』のタイトルロゴと、第1話のエピソードタイトルである「犬とチェンソー」のタイポグラフィが描かれている。ボディカラーは墨黒だ。
商品により、取り扱い店舗や展開国が限定されることや完売することがございます。
© 藤本タツキ/集英社・MAPPA
©Kosuke Kawamura
UT magazine 2023 ISSUE 9 をユニクロ店舗で無料配布中!
注目コラボレーターへのインタビューや新商品の情報が満載。ぜひ店舗でお手に取ってご覧ください。