作家性のあるセラミックが人気のNYで活動する、セラミックアーティストのカサンドラ・タッチャーさん。「キース・ヘリング|ジャン・ミッシェル・バスキア Crossing Lines」のTシャツにデニムを合わせトムボーイな装いで出迎えてくれた。
クレイとの触れ合いは幼少期から
「フェミニンな服はほとんど着なくて、ボタンダウンシャツとジーンズとか、いつもパンツルックなの。ペインターパンツをよくはいているんだけど、だいたいいつも全身白が多いかな。私が使うクレイは乾くと白くなるから、付いても目立たないようにね!」
屈託なく笑いながらアーティストならではのファッションへのこだわりを教えてくれたカサンドラとセラミックとの出会いは、幼稚園の頃からとかなり早い。「幼少期からクレイと触れ合っていて、いつもセラミックづくりは私の感情のはけ口だったわ」。そこから本格的に取り組むようになったきっかけは、大学卒業後にギャラリーで働き始めた頃のストレスフルな生活。以来、スキルを磨くためにセラミックスタジオにも通うようになり、1年ほど前から本格的にアーティストとして活動をスタート。
作品のインスピレーション源はボディ(身体)とその動き。スタジオにもどことなく女性の身体を思わせる制作中のオブジェが並んでいる。「ずっとダンスをしていたこともあって、彫刻を作るときも身体の動きとかジェスチャーをよく考えるの。大学では詩を専攻していたのだけれど、文章を書くということも私にとっては動きを表現することだった。リズムを紡いでセンテンスを作っていくという感じ。しばらくは、なぜ自分が身体に魅了されるのかわからなかったんだけど、身体やその動きというものが私の持つ“言語”なんだということに最近気がついた。自分の言語を持って人との繋がり、お互いをわかり合うことはとても大事なこと。だって生きていく上で何よりも欠かせない重要なことは“共感”だと思うから」
とりわけプログレッシブだった’90年代のNYのダウンタウンで生まれ育ち、「幼少の頃からドラッグクイーンの知り合いもたくさんいて、彼らは私の世界の一部になっていたから偏見を持つこともなかった」という彼女にとって、自分を表現することは呼吸のように当たり前のことのようだ。また、両親が二人共にグラフィックデザイナーという環境で育ったこともあり、コミュニケーションにおいて視覚的なものが果たす役割はとても大きいという。
「ビジュアルによってその背後にあるストーリーを伝えるという芸術方法にはいつも惹かれているの。このセラミックによる彫刻もそうだし、例えばフォトジャーナリズムのような写真による表現もそのいい例。視覚的なものというのは、具体的で人と共有しやすい表現方法だし、大きなムーブメントも起こしやすいと思う。UTのTシャツのグラフィックをきっかけに人と会話が始まることがあるように、こういう芸術やカルチャーも、それを通してそこから会話が生まれるものだと思うわ」
© Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York.
PROFILE
カサンドラ・タッチャー|NY生まれ。ブルックリンを拠点にセラミックを使った彫刻を作るアーティスト。身近に感じないことが多い彫刻をどうやって日常に取り入れられるアートにするかを考え、機能性のあるオブジェを制作中。河井寛次郎の作品を見に京都に行ったことも。「視覚的な美しさだけでなく、制作過程のすべてに思慮深い日本のクラフトへの姿勢に魅了されたわ!」Instagram@kassandraaaa