NYにレストラン『Gem』をオープンさせた弱冠21歳のシェフ、フリン・マクガリーさん。キース・ヘリングの「ラディアント・ベイビー」(光り輝く赤ちゃん)のワンポイントデザインTシャツ姿でインタビューに応じてくれた。
注目の若手シェフが語る食の魅力とは
その若さで自身のレストランを持つというだけでも驚きだが、彼の料理人としてのキャリアは実は10歳から始まっている。LAの有名シェフの料理本やYouTubeを参考に独学で料理を学び始め、11歳で10品160ドルのコース料理を大人たちに向けて自宅にてホストするようになった。14歳から16歳までの間はNYの『Eleven Madison Park』を始めとした名店でのインターンをこなし、高校卒業後すぐにNYにてポップアップレストランを始めることで本格的にシェフとしての経歴をスタートさせた。
現在『Gem』では、1日10席のみという限定された席数の中、12種類のコースメニューが振る舞われている。美しいデコレーションと野菜中心なのに濃厚で満足度の高い料理に舌鼓を打ちつつ、何より印象的だったのは本人が店内の花から食器、家具までの内装の細部すべてを手掛け、サーブまでもをこなすという点だ。
「食はすべての要素を結びつけるというのがいいところ。レストランを持ってからは特に、食べ物はもちろんのこと、店内デザイン、僕らスタッフが何を着るか、そしてどんな音楽をかけるかなど、あらゆる要素に気を配るようになった。レストランは自分のビジョンを作り上げる場所で、ここは僕のキャンバスのようなものなんだ」
彼の世界観を形作るひらめきは世界中からきている。16歳のときに1年ほど住んでいた北欧の文化を中心に、ヨーロッパやアメリカ、日本、メキシコなどいろんなカルチャーを幅広く学び、それを自分流のスタイルにどう落とし込むかを探求する。「今取り組んでいるプロジェクトでは、スパニッシュテラコッタ、日本の木、イタリア製の照明、デンマークスタイルのメタルなどのあらゆる素材を使っているんだけど、これらはまったく違うようで同時に何かしらの共通点があって共鳴する。これは、僕が料理でやっていることと一緒。トルテリーニを使った一品のスープにスモーキーで旨味の効いた出汁を使ったりしているんだ。今新しいロゴにも取り組んでいるんだけど、どれだけ自分が新しいと感じるものを生み出せるかが挑戦だね」
去年の夏には、2か月間もの間店を閉めて、北欧やヨーロッパを旅したりもした。そこで一番刺激を受けたのは、食そのもの以上に、シェフやそこで働く従業員たちのリラックスして楽しく働く姿。「NYではみんな目標や夢を持って暮らしていると思うけど、だいたい困難にぶち当たる。いい意味で容赦ない街(笑)。だから強い意思とエネルギーが必要だ。でもデンマークでは、シェフたちがマナーやルールにとらわれずに自分の気持ちに忠実に楽しみながら働いていた。週3回休みがあったり、2か月の長期休暇をとってフレッシュな気持ちでまたレストラン業務に取り組むというライフスタイルにも影響されたね」
料理を始めてから10年経った今、様々なカルチャーに触れ、興味の幅は料理以外にも飛び火しているという。「特にデザイン全般に興味が広がってる。料理分野だけに縛られずにいろんなチャンスを生かしていきたいと思っているよ。10年後はプロのシェフによる自宅用のキッチンデザインをやってみたいな。まだ誰もやってないと思わない?」
© Keith Haring Foundation. Licensed by Artestar, New York.
PROFILE
フリン・マクガリー|LA生まれ。食のジャスティン・ビーバーとの異名を持ち、10代の頃から注目される若手シェフ。現在はNYを拠点に、2018年にオープンしたニューアメリカンレストラン『Gem』の経営から料理作り、内装デザインなどレストランに関わるすべてを担っている。Instagram @diningwithflynn