今見ても心ときめくポップカルチャー満載のUTの昔のTシャツ。アートをデモクラシーするという信念のもと作ったTシャツは今でも自慢の一枚である。
シルクスクリーンを使ってアートを民主化したアンディ・ウォーホルの思想に心がときめき、Tシャツをキャンバスにアートと接することができたらいいなと考えたのがUTの始まりだ。映画でいえば、ジム・ジャームッシュやヴィム・ヴェンダース。音楽でいえば、ビースティ・ボーイズ、マンガでいえば、井上雄彦、松本大洋。なかでも、バーバラ・クルーガーは大好きなアーティストのひとりだったので、彼女のアートワークをTシャツに落とすことができたのは、この上なく幸せなことだった。今でも大事にこのTシャツはしまってあるし、よく探したら、捨てられないものがこのようにたくさんあった。並べてみると、今のものよりもプリントが大きくて、伸び伸びとデザインしているように感じられる。着ていたあの頃の記憶も蘇る。
今では膨大な量をリリースしているTシャツのほんの一部のアーカイブだが、なかでも思い入れの強いものを引っ張り出してみた。UTという名前が付く以前から、ユニクロではTシャツに力を入れていて、キース・ヘリングやアンディ・ウォーホルなどとも最初期の頃からコラボレーションを行っていた。バーバラ・クルーガーやロイ・リキテンスタインなどは作家名がそのままネームになっていてUTやユニクロの文字は入っていない。
Art
現代アーティストたちの作品はさすがになかなか買えるものではないので、Tシャツにすることでアートを身近にしたかった。バーバラ・クルーガーといえば、モノクロ写真に赤地に白抜きの風刺的なメッセージをのせたタイポグラフィーを用いた作風で有名だが、そのTシャツを新潟に訪れた際に、地元のお母さんが意識せずに着ているのを彼女自身が偶然見かけて、アートのデモクラシー化を感じたという逸話が、ユニクロ内ではまことしやかに語られている。
Barbara Kruger 2004
Barbara Kruger 2005
Barbara Kruger 2005
Roy Lichtenstein 2004
Barry MaGee 2018
Barry MaGee 2018
Tomoo Gokita 2009
Sarah Morris 2014
Photography & Movie
何度も何度も観た映画の名監督や、記録写真をアートに押し上げた写真家たちともコラボレーション。映画では、ジム・ジャームッシュの初期3部作、『パーマネント・バケーション』、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』、『ダウン・バイ・ロー』の記憶に残る名シーンをTシャツに。日本が世界に誇る写真家、森山大道、荒木経惟の作品はNYの旗艦店オープンの際にも好評を得た。世界的写真家集団、マグナム・フォトの会長も務めたマーティン・パーとも共作。
Jim Jarmusch 2011
Jim Jarmusch 2011
Daido Moriyama 2006
Daido Moriyama 2012
Nobuyoshi Araki 2012
Martin Parr 2008
Masayuki Shiota 2009
Music
ビースティ・ボーイズといったミュージシャンはもちろん、UTは音楽レーベルとも密接だ。イギリスのインディペンデントレコードレーベルである、ラフ・トレードや、ドミノ・レコーズともコラボレーション。そのレーベルに属しているから、所属バンドも好きになった。ラフ・トレードはそのロゴを、ドミノ・レコーズとはジェイミー・ヒンスとアリソン・モシャートからなるバンド、ザ・キルズのアルバム『No Wow』のジャケットグラフィック入り。
Rough Trade 2009
Domino 2010
Beastie Boys 2014
Manga & Anime
日本が世界に誇るマンガやアニメともたくさんのTシャツを作ってきた。こちらは松本大洋の卓球スポ根マンガ『ピンポン』。他にも出世作であり代表作の『鉄コン筋クリート』や『竹光侍』、『Sunny』などもTシャツになった。日本を代表するイラストレーターのひとり、天野喜孝ともコラボ。タツノコプロ時代には『ヤッターマン』や『ガッチャマン』などの人気キャラクターを生み出し、『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインも手掛けた。
Taiyo Matsumoto 2007
Yoshitaka Amano 2007