佐藤可士和
2020.08.27

クリエイティブディレクター佐藤可士和さんが語る、原宿店・TOKYO店の魅力とこれから。

佐藤可士和

6月に原宿と東京に続々とユニクロの新店がオープンした。日本最大のUTコーナー、UT POP OUT!を擁する原宿店、「LifeWearのすべてをここに」をコンセプトに掲げるユニクロ TOKYO。トータルクリエイティブディレクターを務める佐藤可士和さんは新店に何を思うのか。

Tシャツを発信するなら原宿という街から。

UNIQLO HARAJUKU

ー2007年、ユニクロ原宿店は、UT STORE HARAJUKU.として生まれ変わりました。クリエイティブディレクションを手掛けられた佐藤さんにとって原宿店にはとても思い入れがあると思います。まずは原宿にカムバックしたことへの思いをお聞かせください。

UTにとって原宿とは、初めてUT STOREを出した場所ですから大切な場所です。僕が柳井社長からTシャツブランドについてご依頼を受けたとき、まずは「お店が欲しいです」とお話ししました。では「どこに?」とという問いに対して、迷わず「原宿に」と答えました。原宿はこれまでもずっとストリートファッションの聖地だったし、Tシャツという究極のベーシックアイテムをこの地から発信したいと考えたからです。ですから、こうしてこの地に戻ってこれたことはシンプルに嬉しいですね。だからこそ新しい原宿店の1階はUT POP OUTとして、さらにアップデートしたUTの世界観を全面に押し出したいと考えました。

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佐藤可士和

Tシャツとともに陳列されたエコバッグのほか、豆皿やノート、バンダナなどを含むUTグッズも、原宿店を軸にスタートした企画だ。

ーUT POP OUTとはどんな目的や思いを込めて作られたのでしょうか。

UT POP OUTは、様々なイベントや新しい試みをできるような「場」を提供したいという考えから生まれました。つまりあらゆるモノやコトがここで起き、それを体感してもらえる「場」です。UTというブランドが持つあらゆる可能性をこの地から発信していくため、様々なトライアルをしていきたいんです。もちろんTシャツの見せ方にもこだわり、店に入った瞬間から最旬のアイテムが目に飛び込むようにしたり、UTグッズも原宿店を機軸に考えた新しい試みの一つです。コンテンツの世界観をもっと広げていけるようなものが欲しいと思ったので。

キース・へリング マメザラ(12cm)

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アンディ・ウォーホル ノート(B6)

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ーそのほか新生UT POP OUTの見どころとは?

オープンからエントランスを彩ってきた、現代美術家・村上隆さんによる巨大ビリー・アイリッシュ像も話題になりましたし、スケールの大きさを感じさせる展示は今後も行っていきたいと思います。また超大型モニターも今回の新しい試みの一つです。このモニターから様々な情報発信ができるはず。コンテンツムービー自体が一つの作品になっていくような、クオリティの高いものをどんどん発信していきたいですね。

佐藤可士和

店内に足を踏み入れた瞬間、中央の超大型モニターが訪れた人を迎える。

佐藤可士和

コンテンツに紐づくカルチャーや背景を展示物を使って表現。店舗でしか得られない体験を提供する。写真はザ・ブランズ・ミュージックでコラボレートした「フェンダー」のギター(6月時点)。

原宿店はギャラリーのように、TOKYO店はミュージアムのように。

UNIQLO TOKYO

ー原宿店に続き、オープンしたTOKYO店では広い空間を生かしたプレゼンテーションを行っています。どのような狙いがあるのでしょうか?

TOKYO店は、LifeWearというコンセプトをお客様に体感していただく店舗です。UTももちろんLifeWearの中でも重要なポジションなので、原宿店とはまた違う見え方になるよう特別な売り場を作っています。原宿はギャラリーのような見せ方をするのに対して、TOKYO店はミュージアム的なプレゼンテーションができる場所。LifeWearコーナーやエアリズム、サステナビリティを見せる空間と同じように、UTの様々コラボレーターとの協業の面白みを感じてもらえる空間になったと思います。

佐藤可士和

手前はコラボレーターの関連書籍を、奥にはアーカイブ(関連記事はこちら)を展示。

ーアーカイブ展示はTOKYO店ならではのプレゼンテーションですね。

広いスペースを使って、アーカイブを見せることができて、改めて昔のUTもヴィンテージのように味が出てきて、今見てもかっこいいなと思いました。アーカイブ郡から復刻デザインなどを出すのも面白いですし、原点を振り返ることでまた新たな可能性を感じましたね。またアーカイブコーナー自体も、コンテンツやカテゴリーなどごとにキュレートするなど、色んなことができたら楽しいのでは。

佐藤可士和

多くの人に愛されるアーティスト、ジェイソン・ポランの早すぎる死を惜しみながらも、彼の功績をたたえるスペースも設置。

ー新たな2店舗の開業により、UTは世界観を表現する「場」を得ましたが、今後UTが目指すべきブランド像とは?

UTとはプラットフォーム、いわゆる仕組みだと思っています。先ほども言いましたが、Tシャツは服の一番基本形です。そのTシャツにあらゆるコンテンツが加わり、全世界でリーズナブルな価格で売られていく。これはユニクロにしかできないと思います。Tシャツにこれだけフォーカスして、力を入れている企業は他にありません。まだまだ可能性が広がっていると思いますし、世界のTシャツブランドを引っ張っていくリーディングブランドであるべきだと思います。ブランドを広げていく上でも場作りは重要です。リアルな体験はもちろん、デジタル上でも、ただプロダクトがあるだけではない、各コンテンツのストーリーがきちんと伝わる体験を提供していきたいですね。

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佐藤可士和

佐藤可士和|クリエイティブディレクター/アートディレクター。1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年クリエイティブスタジオ「SAMURAI」設立。ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、空間設計、デザインコンサルティングまで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリ、亀倉雄策賞、朝日広告賞、日経広告賞、日本パッケージ大賞金賞ほか多数受賞。多摩美術大学客員教授、 東京アートディレクターズクラブ理事、 2017年度文化庁・文化交流使。http://kashiwasato.com/

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