馬場未織、Anna Grønkjær Jensen
2021.02.22

里山と人の暮らしを考える。Vol.2 − 里山で暮らすということ。

馬場未織、Anna Grønkjær Jensen

UTでは、【里山 日本の原風景】コレクションを通して、里山の持つ魅力を伝えていきたいと考えている。日本ならではの独自のこの風景は、海外からも注目を浴びるようになったが、実際里山での生活とはどういったものなのか。里山は何を私たちに教えてくれるのだろうか。そこで、実際に里山で暮らす2名にフィーチャーし、その魅力について語ってもらった。

Case1: 馬場未織さん(千葉県南房総市)

馬場さんは東京と千葉県南房総市と2つの拠点で生活をする里山ラバー。平日は東京で建築ライターとして仕事をこなしつつ、週末は海と山に囲まれた美しい里山で時間を過ごしている。またNPO法人南房総リパブリックの理事長として、里山学校の運営などを手掛ける。

馬場未織

二拠点生活を選んだ理由は?

魚や虫、石、宇宙などの図を覚えるほど読んでいた長男から「ママ、本物が見たい」と言われたのがきっかけです。東京出身の私たち夫婦には何の不足もない都市生活でしたが、自然好きの小さな息子から見たら東京の環境は貧しいものだと気が付きました。そこで、自由の利く週末だけでも田舎で暮らしたいと考えました。「おばあちゃんのいない、田舎のおばあちゃんち」があればいいなと。3人の子育てを自然の中でしたいという願いを叶える、合理的な方法だと考えました

馬場未織

水平線に沈む夕日が美しい浜辺でギターを楽しむ娘さんと息子さんのショット。

南房総を選んだ理由と魅力は?

3年ほどかけてさまざまなエリア、さまざまな物件を見てきました。その中で南房総は、我が家からドアツードアで1時間半で到達できるのに昔ながらの里山風景が残されている「もっとも近くてもっとも深い田舎」だと思いました。都市生活者にとっては、ブランディングされていない、自意識の低い素朴な土地柄がむしろたまらなく魅力的です。半島の南端なので里山なのに海にも近い。ですから、夏は朝夕の涼しい時間に野良仕事をし、昼間は海で遊びます。冬はあたたかい日中に野良仕事をし、夕方には海に行って日の入りを見ます。先日は畑の真ん中に寝転がって、家族でふたご座流星群をみながら一夜を過ごしました。東京の隣県とは思えないなあ、といつも思います。また、田舎は子育てにいいのだから猫育てにもきっといいだろう、というざっくりした考えで飼い猫も連れていきます。ネズミやモグラをつかまえたり、木に登ったりと、野生に戻る姿が見られるんです。大学生になった長男は、友達や自分だけで南房総に来てサーフィンを楽しんだり、釣りをしたりしています。子世代が南房総と主体的に関わっていく様子を見ると嬉しくなりますね。

馬場未織

二拠点生活を始めてから心や体に起きた変化とは?

多分、今が人生で一番、心身ともに健康な状態だと思います。理由はやはり、定期的に自然の中で過ごす時間を持ち続けていることだと思います。仕事や子育てが大変で悩みのある時も、人間社会とはまったく別の自然時間に身を置くことで「まあ、たいしたことはないか」と悩み自体が相対視でき、気持ちが軽くなるのです。わたしの場合根がズボラという面もありますが、母親が楽観的だと、家庭も明るくなるようです。また、土を耕したり草刈りをしたり、木の伐採をしたり、焚火をしたりと体を使って外で過ごしていると、自ずと体調も整います。フィットネスに通わず体を使い、それで里山環境も整っていくことを「サトヤマビクス」と呼んでいます。 そういえば、昔は辛いものが大好物で、味付けも強いものを好んでいましたが、気が付けばそういう刺激を身体が欲さなくなりました。何かが満たされてしまったんでしょうね。紫外線を浴びると肌が劣化するなど心配すればキリがありませんが、わたしは体の内側と外側がバランスよく整う暮らしを送る方が美容にもいい気がしています。体は心の鏡ですから。

Case2:Anna(アナ) Grønkjær Jensen さん(石川県小松市)

デンマーク出身のアナさんは、父親が学長を務める学校で遊びや食を学び、またご両親の子供や若者のための環境づくりへの情熱を側で感じながら過ごしてきたそう。約5年前初来日して日本の食文化に興味を持ち、一旦帰国するも再来日し、青山ファーマーズマーケットの運営や『Appetite Magazine』の編集を経て、2020年春、小松市滝ケ原町に拠点を移し、TAKIGAHARA FARMで食に関する学びを提供している。

Anna Grønkjær Jensen

滝ヶ原に移住したきっかけは?

私が本格的に日本に移住したきっかけは約1年前、東京の青山ファーマーズマーケットでの仕事に携わるためでした。ここ数年、私は食と教育のつながりについて探求してきました。食は、食そのものを学ぶという直接的な意図だけでなく、食を媒体として他の分野についても学ぶという創造的な学習空間を提供すると考えています。しかし新型コロナウィルスの影響でファーマーズマーケットは一旦クローズし、運営チームは全員リモートワークに切り替えざるを得ませんでした。私はこの機会に日本の他の地域を見てみたいと思い、滝ヶ原に2、3日滞在の予定で旅立ちました。3日が1週間、1週間が2週間になり、現在に至ります。滝ヶ原は私が生まれ育ったデンマークの田舎のような懐かしさがあり、不思議なほどに親しみと居心地の良さを感じたからです。

Anna Grønkjær Jensen

滝ヶ原ではどんな生活を送っているのですか?

滝ヶ原での私の日常は、
・季節の虫の鳴き声で目を覚ます。
・朝7時ごろ、隣に住む中出さんのドアのノックで起こされ、朝食前にレンコンの収穫を手伝ってくれないかと頼まれる。
・土鍋でご飯を炊くという同じ行為を毎日繰り返し、完璧な食感をマスターすること。
・季節の気温で快適さを見つける:川に飛び込んで体を冷やすか、火を焚いて暖める。
・木に登って、美味しいジャムの主人公となる美しい秋の柚子を収穫する。
・近くから遠くから聞こえる様々な人の話を聞きながら、見知らぬ人や友人と夕食を作る。
といったものです。基本的に滝ヶ原には美味しい食と素晴らしい人々であふれています。これ以上何を求める必要があるでしょうか?

Anna Grønkjær Jensen

里山で暮らし始めて心、体に起きた変化とは?

里山に住むことで人間は自然の一部なのだと実感できます。里山で育った作物を食べ、里山の音を聴き、里山に存在するあらゆるものに触れるという暮らしは、2つの大切なことを私に教えてくれます。1つはどんな環境にいても知恵を出し合いながら生き残ることの大切さ。もう1つは、自分が生きる意味とは何か、考えるきっかけを与えてくれたこと。何があなたを生きていると感じさせてくれますか?里山はそんな問いの答えを教えてくれる最適な場所だと思います。

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