2016.12 発刊 (服のチカラ 17号より)
子どもたちに自由なよろこびを。
注目のアーティスト、ジェイソン・ポーランが
ホームレスシェルターで暮らす子どもたちと、絵を描いた。
ユニクロのニューヨーク5番街店は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の目と鼻の先。
MoMAと提携したイベントも頻繁に行われ、ニューヨーカー注目のスポットになっている。
アメリカでは、自分の家で暮らすことができなくなる人々が年々増えている。ニューヨーク市でも、ホームレス問題は深刻化している。家を失う理由はさまざまだ。失業はもちろん、家賃の高騰、家庭内暴力、自然災害……など。家を出ることになれば、その日から食事をするテーブルも、眠るベッドも、からだをきれいにするバスルームも、座ってテレビを見たり、飼っていた猫と遊ぶソファも、なくなる。親の事情にしたがって生きるしかない子どもにとって、それはどれほど悲しい出来事だろう。2016年夏のニューヨーク市の調査では、公立小学校に通う子どものうち、自分の家を失って、「シェルター」と呼ばれる一時宿泊施設や、親戚の家、友人の住居に仮住まいする子どもがすでに8万人を超えたことがわかっている。この数年で最悪の状況だ。ホームレスシェルターで仮暮らしする子どもたちを、ユニクロ ニューヨーク5番街店に招待して、半日だけ自由に絵を描いてもらったらどうだろうか。ユニクロのスタッフとジェイソン・ポーランのあいだに、そんなアイディアが生まれた。始まりはシンプルだった。ジェイソン・ポーランの絵をあしらったTシャツの企画が進むなかで、店舗限定でジェイソンのマンハッタンの手描き地図を用意し、ユニクロの店舗で彼と絵を描いて遊ぶイベントも企画しよう、となったとき、ホームレスの子どもたちと絵を描くのはどうだろう、という話がもちあがったのだ。「子どものころ、いつも絵をかいていたからね。子どもたちに絵を描くおもしろさを体験してもらいたいし、なにより僕自身が子どもといっしょに絵を描いてみたいんだよ!」(笑)このささやかな試みが、子どもたちにとってどんな意味をもつことになるか。やってみなければわからない。 ならば、やってみよう──。