2009.10 発刊 (服のチカラ 1号より)
障がい者と働くということ
お洒落な三浦さんのこと
じんの ようこ
神野洋子さん
光栄会障害者就業・生活支援センター 就業支援担当者
みうら ちえこ
三浦智恵子さん
知的障がい ユニクロ宇部清水川店
「『ユニクロ』という会社の話を聞いたんですけど…。接客もあるみたいだし、やめておこうかなと思って」前職を辞めて、次の仕事を探していた三浦さん。そんな彼女から、光栄会障害者就業・生活支援センターの神野さんのところにかかってきたその日の電話は、いつもと少し違った。人一倍「働くこと」に熱意をもっている三浦さんとは思えない、ちょっと気乗りのしない声。でも、ちょっと待って。神野さんは直感する。「ユニクロって、三浦さんに合っている!」神野さんが三浦さんと初めて会ったのは、三浦さんが前職を辞めた直後のこと。障がい者雇用を支援する地域のネットワークには、ハローワークや障がい者職業センターなどもあるが、神野さんが所属する障害者就業・生活支援センターは、仕事だけでなく生活支援も行うという点で他とは異なる。三浦さんにとって、一番身近な相談相手が神野さんだ。三浦さんは就職活動にすごく積極的だった。ただユニクロに対しては、それほど熱意やリアリティを感じていたわけではなかった。というもの、三浦さんの前職は加工食品の工場。社外の人との交流はなく、仕事内容も同じ作業の繰り返し。毎日いろんなお客様が来店するユニクロとは、全く異なる環境だ。三浦さんが尻込みするのも無理はない。でも、神野さんの想いは違った。「いちばんは、おしゃれが好きな人だから(笑)。好きなことなら、より前向きに仕事ができる。それに環境は変わりますが、前職で長く働いていた経験から、基本的な労働習慣や職場のマナーは完璧。ユニクロの仕事はむしろ合っていると思ったんです」神野さんは、一緒に就職活動を進めるなかで、しっかり見つけていた。三浦さんの能力だけではなく、人柄や好きなこと、そして、働くことへの想いのようなもの。「だって、仕事が無くて『気が滅入る』という話をされているときも、おしゃれだけは欠かさなくて(笑)」神野さんの後押しもあってユニクロに入社した三浦さん。現在は前職以上に活き活きと働いている。店舗へ様子を見に来た神野さんにも「次は、ズボンの裾上げもやってみたい」と、楽しそうに話す。「夢や目標を持てるようになったのが、すごいと思いますね。障がいがあってもステップアップしていける、上を目指せる、そういう環境が、三浦さんには良かったんだと思います」三浦さん一人だったら、ユニクロでは働いていなかったかもしれない。だけど神野さんが加わることで、三浦さんの夢も可能性も広がった。