2012.11 発刊 (服のチカラ 10号より)

ケニアの難民キャンプで出会った

若者のチカラ、服のチカラ

10年後には、ユニクロの一員としてバングラデシュに逃れた難民を助けたい

過去最大規模といわれるソマリアの人道危機。
干ばつも重なり全人口の3分の1が故郷を離れざるをえなくなり「最悪の人道危機」ともいわれています。
昨年9月に実施した100万ドル(社長 柳井正個人から別途100万ドル)の寄付に加え、
私たちなりの支援を行うために、全商品リサイクルの一環として100万着の衣料支援プロジェクトを実施。
ケニアの難民キャンプを訪れました。

 今回訪れたのはアフリカ大陸の北西部に位置するカクマ難民キャンプ。その実情はとても厳しいものでした。ケニアの中でも特に開発が遅れ、気候的にも厳しい地域にあり、水事情も悪い。長引く紛争により、祖国に帰れる目途もたちません。他のキャンプと同じように、水、食糧、テントなど最低限の支給はあるものの、衣料支援は滞りがちです。ひどい干ばつと砂嵐で体が砂埃だらけになりますが、水事情が悪い中では服を洗う余裕はありません。特に子ども服はもともと不足している上に配布される数が少ない状況。子供たちは裸か、大人が着古したボロボロのTシャツを着ることが多く、常に感染症やけがの危険にさらされています。今回、過去最大となる100万着の衣料支援を行いましたが、1人上下2着ずつ配布をしたとしても、25万人にしか配布できません。一方、ケニア国内の難民の数は63万人にものぼります。100万着でもまだまだ、足りないのです。訪れる度に、この活動の意義を、大切さを痛感させられています。初日に訪問した女子寄宿学校でのこと。すでにユニクロから配布された服を着ている女子学生たちの、弾けるような笑顔に出会いました。寄附によって建てられたこの学校で学べる彼女たちは、難民の中では恵まれている方で、普段は制服を着ています。でも、ユニクロの服を着た彼女たちは、難民キャンプの厳しい状況を一瞬忘れているように見えるくらい、本当に嬉しそうでした。真っ赤なアウターやベーシックなパーカーをスマートに着こなし、スラリと伸びた長い脚にスリムなジーンズがスタイリッシュに映えています。中には、ジーパンのサイズが少し小さめだけど、格好いいから着ているという少女もいます。「どういう時に着ているの?」と聞くと、「オシャレが好きなので、土日に着るのを楽しみにしているんです」と微笑んでくれました。寄宿学校は難民キャンプの中では支援が行き届いているのですが、それでも彼女の持ち物は日用品や雑貨もふくめて小さな衣装箱ひとつ分程度。服は3、4枚に過ぎません。1枚しかもっていない制服で寝なければいけないような子がいる中で、ユニクロの服を楽しんでくれている。週末に、大事に着てくれている。小さいけれど、確かにある、服のチカラの一端を実感した一瞬でした。彼女たちが、あまりに明るく見えたので、将来何になりたいかを聞いてみました。手渡した紙に書かれていたのは、「ジャーナリスト」「医者」「先生」…。それぞれの夢を力強く書いてくれました。簡単ではないけれど、夢があり、それを信じられる強い意志があるから、エネルギーになる。そして、私たちの届けた服は、厳しいキャンプ生活の中で服としての役割を果たすだけでなく、彼女たちの楽しみになり、人を輝かせるチカラの一部になっている。これからもずっと、服を必要とする人たちのチカラであり続けるために、この活動を続けていかなければならないと強く感じながら、自然に、彼女達の笑顔に“ありがとう”と言っていました。