紛争や迫害により故郷を追われた難民・国内避難民の多くは、物資や服による支援だけではなく、避難した先で経済的に自立し、尊厳を持って生活するための基盤が必要です。FRでは難民キャンプへの衣料支援(写真左上/2018年、コロンビア)のほか、ユニクロ店舗での難民雇用、自立のための教育や技能習得など、UNHCRの難民自立支援プログラムにも協力。2020年からは、UNHCRが立ち上げた、難民となった人々が故郷で培った伝統技法でつくる手工芸のグローバルブランド「MADE51」の活動をサポートしています(写真右下/2020年、エジプト)。
悪化する状況―コロナ禍から得られた教訓
難民等を巡る問題は、残念ながら悪化しています。2020年末時点で、約8,240万人が紛争や迫害から逃れるために移動を強いられました。9年連続での増加です。理由は、古い紛争が解決しないまま、新しい紛争や危機が増えているからです。近年、エチオピアで危機がありましたが、シリアは10年以上、アフガニスタンは40年以上前から紛争が続いています。地政学的にも楽観視はできず、少なくともあと数年は難民等の数が増え続けるでしょう。世界はいまだに平和を構築し、維持するのが難しいと言わざるを得ません。
新型コロナウイルスは、世界に重大な教訓を与えました。気候変動もパンデミックもグローバルな問題であり、大統領から一般の人まで世界の誰もが、その影響を免れません。自民族や自国民のみで閉じこもり、国境を閉鎖すれば解決できる問題ではないのです。難民問題も同じで、分断の危機にこそ、世界の連帯が大切です。もし世界が協調することなく、国と地域別で対応するならば、われわれは平和、正義、自由のための闘いに負けてしまう。コロナ禍の教訓が今後、難民問題の解決を加速してくれることを願っています。
命を救うための服とその先にある持続的な支援
FRは、2011年にUNHCRとグローバルパートナーシップを結んだアジア初の企業です。これは単なる寄付や資金援助を超えたパートナーシップであり、支援の多様さや広さ、協力関係の深さにおいて、民間セクターによる難民支援の素晴らしいモデルになっています。私自身も、これまで難民等がFRの服を受け取り、温かさと尊厳がもたらされるのを見てきました。服、食料、医療品、テントなどの緊急物資援助は即時性のある支援になるものの、40年以上も続くアフガニスタンの状況のように、難民等が避難先で自立的な生活の礎を築くには、FRとUNHCRが取り組み続けてきた難民雇用や自立支援プログラムなど持続的な支援が必要不可欠です。難民・国内避難民は、私たちのように一般の生活者であり、隣人でもある。しかし、その存在が身近に感じられない国もあります。これらの取り組みは、FRがグローバル企業だからこそ、難民・国内避難民の存在を多くの人へ知ってもらうという重要な役割も果たしているのではないでしょうか。それが明るい未来へとつながっていると確信しています。
これまでの難民支援の実績
4,619万点以上
2006年~2021年8月末の間、FRはお客様のもとで不要になった服を店舗で回収し、UNHCRや世界各地のNPO・NGOと協働して難民・国内避難民へ寄贈してきました。コロナ禍では、300万枚を超える「エアリズムマスク」を提供。
8カ国120名
2011年から、ユニクロでは避難を強いられている人々とその家族を対象に雇用を進めています。2021年4月末現在、日本と欧米の8カ国で、120名の難民がユニクロ店舗等で働いています。
約19,000名
2006年~2021年8月末の間、FRはお客様のもとで不要になった服を店舗で回収し、UNHCRや世界各地のNPO・NGOと協働して難民・国内避難民へ寄贈してきました。コロナ禍では、300万枚を超える「エアリズムマスク」を提供。