3年間の活動報告
PlaNet Financeは世界約60カ国にネットワークを持ちマイクロファイナンス(貧困層/小規模事業者向け金融サービス)の推進を通して貧困の無い世界の実現を目指す国際NGOです。プラネットファイナンスジャパンはその日本拠点として、民間企業や国際協力機構(JICA)等の政府機関と協働して日本発のマイクロファイナンスプロジェクトやマイクロファイナンスを活用したBOPビジネスのプロジェクトをアジアやアフリカで実施しています。東日本大震災の被災地においてはマイクロファイナンスの考え方を生かし、現地の信用金庫と連携して、新規事業立ち上げや小規模事業者の自立的な復興と雇用促進を目指した活動を行っています。
3年間の活動のまとめ
ユニクロ復興応援プロジェクトの資金を後述の「三陸復興トモダチ基金」の活動に役立てて参りました。同基金は以下3つのプログラムにより被災した小規模事業者の事業再開と新規事業創出の支援を行っています。
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- 被災地域再生・新規事業創出助成
震災後、被災地のニーズに応える新たな事業の立ち上げを支援しています。起業資金の半額を上限として一件最大150万円で起業家自身が調達した資金と合わせて活用する形にしており、事業に必要な経験と能力そして地域の復興に貢献する高い意欲のある起業家を支援してきました。厳しい経済環境にもかかわらず、三陸地域における新規事業数76社の内97%が現在も事業を継続しています。
- (2)
- 被災事業者雇用サポート助成
震災により被災した小規模事業に対して、事業再開のために必要な従業員の雇用をサポートしています。
- (3)
- 復興支援融資利子補給プログラム
被災し、資金調達が困難な小規模事業者への金融アクセスを促進するため、気仙沼信用金庫様と協働し、2年間の利子補給により支払い負担を軽減した融資を提供しています。これまでにユニクロ復興応援プロジェクトで52社に対して、総額約4億円の融資を提供しています。
3年間の活動を通して当初想定した計画を大きく上回る形で、活動地域を拡大し、多くの小規模事業者の方々の事業の再開と、被災地で起業する方々への支援をして参りました。2011年の震災直後と現在では被災地の状況も大きく変容しており、事業者の方々が抱える課題も変化しています。
震災により事業の停止に追い込まれた地元企業にとって、事業再開のためには施設や店舗の復旧と従業員を雇用する資金が不可欠でした。しかし、これらの多くの企業は被災前から既にローンを抱えており、更なる資金を調達するにはさらに大きなリスクを抱えることになるため、再開をためらわざる負えない状況がありました。一方、銀行も事業が停止し売上の見通しが立たない企業に融資することに震災直後は消極的であったといえます。
この様な状況下、「トモダチ基金」の復興支援融資のプログラムは施設の復旧を計画する企業に融資を受ける際の金利負担を軽減し、雇用助成プログラムは従業員の給与の一部を支援することで事業の再開を後押しする効果があったと考えられます。一方、新規創業助成は、被災し廃業した事業主に代って、新たに事業を立ち上げる方々の創業を後押ししました。新しく創業した方々は、食料品、日常品の販売、福祉や保育サービスといった生活に必要不可欠なモノやサービスを廃業した事業者に代わって提供することで、地域の生活を支える役割を果たしています。また、震災をきっかけに地元に戻り、様々な地域のニーズに応える事業にチャレンジする若手の起業家も基金を活用して地域の活性化に貢献しています。
「トモダチ基金」は震災直後からの3年半の活動を通して、被災した地元企業や新規事業を持続的な発展の段階まで後押しする効果があったと考えております。
3年間の活動で生まれた変化やエピソード
「トモダチ基金」の成果を客観的に評価するために、2013年9月からから2014年2月にかけてプロジェクト開始当初からのパートナーである米NGOメルシーコープ(Mercy Corps)と共同で、第三者機関によるプロジェクトの客観的な分析と評価を実施しました。ベルギーのコンサルタント会社である、New Frontier Service社を第三者機関として選定し約5か月間かけて総合的な評価が実施されました。同レポートの中では、
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- 「トモダチ基金」のアプローチの新規性
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- 迅速かつ柔軟で、被災した事業者のニーズに的確に応えていること
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- 新規事業の創出への貢献
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- 信用金庫とNPOの日本で初めての連携が効果的に機能していること
等が高く評価されました。
また、PFJが支援先事業者と接する中で聞かれたフィードバックとしては、新規創業助成に対しては「自己資金でカバーしきれない創業資金を寄付というかたちで支援してもらえたことは、売り上げの見通しが立たない当初は心強いものであった。」「すぐに返済が始まる借り入れと比べて、資金が潤沢でない創業期においては、安定して経営を行うことができた。」といった声が聞かれました。また、雇用サポート助成や復興支援融資に対しては、「震災により多くを失い、再開後の売上の見通しが立たない小規模事業にとって、従業員の給料の支払や借入金の金利負担は非常に重い。このような負担を軽減する助成金は、再建途上の企業にとって、安定的かつ持続的に事業をおこなう上で非常に助かった。」といった声が聞かれました。