2008年、メンズの夏用インナーウェアは「シルキードライ」として販売を始めた。求めたのは空気のような着心地。当時、メンズのインナーウェアにおけるマーケットは、綿もしくは綿とポリエステルの混紡のいずれかだった。吸水速乾性に優れた合繊を用いたインナーウェアという製品の提案は、つまり、肌着といえば綿という既成概念を覆す挑戦であった。素材は東レの繊維技術が生んだ極細ポリエステルで、その極細な原糸は驚くほどなめらかな肌ざわりと締めつけのないストレスフリーな着心地を可能にする。極限まで細くやわらかい繊維は軽い着心地はもちろん、暑い日ほどエアリズムを一枚多く重ねることでより快適になるという新しい価値観をもたらした。身体に寄り添うシルエットはまた、男性のファッション性も高めた。ワークウェアやスポーツウェアなど、さまざまなシーンのアクティブな衣服にも身体に馴染むインナーウェアの存在は心強い。

その機能性を高めるため、特に男性用インナーウェアは革新を続けた。繊維を細く、縫い目の平滑化はシームレスへ進化し、ストレッチ性の向上、軽量化、吸汗速乾や消臭機能の強化といったアップデートを続ける10年であった。糸をより細くすることで肌ざわりはさらによくなるが、強度や染色性能の担保は難しくなる。こうした技術的な問題に立ち向かいながら、エアリズムは進化を続けている。

メンズに先立つ2007年、ウィメンズの夏用インナーウェアは「サラファイン」の名でデビューした。当時から変わらず素材の根幹を成すのが、高級スーツの裏地にも使われる旭化成のキュプラ「ベンベルグ®」だ。原料は綿花の種子を包むうぶ毛状の短繊維であるコットンリンター。これ自体が「呼吸する繊維」であることに大きな意味がある。

暑いときは熱を逃がし、涼しいときは保温や湿気を調節する。女性はインナーを重ねることが多く、男性よりも衣類内の温度が高くなりがち。高温多湿な土地ではそこに湿度が加わる。着ることで涼感を得られる製品としつつ、肌冷えを感じないよう、綿よりも吸水速乾性が高く、吸放湿、放熱、汗処理などの機能も併せ持つ製品を実現した。

なにより最大の魅力は、シルクのようななめらかさと心地よい肌ざわりだ。ベンベルグ®の断面をマイクロスコープで見ると、真円でなめらかな形状で敏感な肌にも刺激が少ない。そして水分量の多いみずみずしい繊維のため、しっとりした感触、上品な光沢や発色、静電気を起こしにくいといった特徴をもつ。同時にナイロンを組み合わせ、繊細な糸ながら着用頻度の高い肌着の強度を高めている。

ユニクロは製品を常に進化させている。男女で製品特性が異なるエアリズムは、それぞれによりよいものを求める姿勢が品質の向上につながった。そして新しい価値をもつ製品の登場は衣服の文化そのものを変える。インナーウェアとアウターウェアの境界線は曖昧になり、エアリズムはアウターウェアにも発展。同時に人々の嗜好がコットンに回帰する動きにも合わせ、２本の糸を編み地の表と裏に分けて編むことで生まれる「エアリズムコットン」を開発した。時代のニーズに応えるべく、今もエアリズムは進化を続けている。